近年新たなカルシウム結合タンパクとして報告されたsecretagogin(SCGN)含有ニューロン(SCGNニューロン)について昨年度に引き続きマウス嗅球において形態学的解析を進めた。SCGNの発見者であるDr. Wagnerより供与の特異抗体を用いた免疫染色標本の共焦点レーザー顕微鏡およびカメラルシダ解析による形態的特徴のより詳細な解明、蛍光多重染色標本の共焦点レーザー顕微鏡解析による他の化学的物質との共存関係の解明、ステレオロジーによる予備的定量解析を進めた。この解析から以下の新たな所見が得られ、論文としてまとめた。1)SCGNニューロンは嗅球全層に分布し、全層においてcalretininとの共存がかなり見られた。2)特に、糸球体近傍のニューロンで古典的なperiglomerular cells(PG細胞)はしばしばSCGNとcalretininとの共存を示したが、一方、calretininとの共存を示さないSCGNニューロンのあるグループは、その突起が一つの糸球体から隣の別の糸球体へと延びていた。これは糸球体内には突起を出さないとされるsuperficial short-axon cellsとは明らかに異なっており、また従来のいわゆるPG細胞とも異なっており、新たに見出されたタイプの糸球体近傍ニューロンと考え、transglomerular cellと命名した。3)予備的なステレオロジー解析で、糸球体層のSCGNニューロンは1嗅球に約8万個であることが明らかとなった。4)僧房細胞層にはSCGNニューロンが平面状に並んで分布していたが、同様な分布を示す5T4陽性顆粒細胞とは異なるグループであることが明らかとなった。
|