研究課題
本研究を遂行する上で基準となるGABAシグナルの脊髄における正常発達のデータを確定し、論文として発表した。抑制性ニューロンは4種類の集団で発生した。抑制性ニューロンは前角においては最初GABAニューロンとして発生し、生後グリシンニューロンに変化した。GABAシナプスは前角においては胎令15日から形成され、出生日にかけて急激に増加した。生後は減少し、成熟動物ではグリシン優位になる。一方、後角では胎令17日から形成され、生後急激に増加した。さらに、GABA排出機構も解析し、現在論文投稿の最終段階にある。胎令13日頃(GABAニューロンが局在する時期)、放射状グリアにGAT3が発現し、アストログリアへの分化の過程で発現しつづけた。一方、GAT-1は後角で、プレシナプスにが発現し、GABAの排出に関与することが明らかになった。以上の結果を踏まえて、現在飼育中のKCC2 KOマウス、GAD67 KOマウス、VGAT KOマウスを同様の方法で解析した。その結果、いずれのマウスにおいても、ニューロンの出現、排出機構の発達、シナプス形成に大きな異常を認めることができなかった。このことから、GABAのシナプス放出やGABAの抑制性とGABA回路との関係はさほど無いと考えられた。しかしながら、2点の異常が認められた。1点目は、VGAT KOマウスにおて、後角の発達が悪く、未熟な状態であった。出生直前の18.5日胎令において、まだ未分化な状態であった。2点目は、KCC2 KO, VGAT KOマウスにおいて、GABAニューロンのサブクラスであるCalbindin陽性ニューロンの数が優位に多く、細胞分化、形成の異常が認められた。以上のことから、GABAの小胞性の放出、抑制性作用とあるサブクラスのニューロンの発生分化、または後角形成との関係が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまで明らかにされたていなかったGABA伝達関連分子欠損と形態異常との関係が明らかになった点は非常に大きな発見と言える。この点は、当初の研究予定にない事項であり、さらに研究を進める必要がある。そして、GABAそのものの機能解析へと移ることができる。
1.GABA伝達の障害、GABAが抑制性に働かないことによる異常が発見された。当初の研究計画にはない新規の実験を1年間で行う予定である。異常発生のメカニズムを明らかにし、GABA伝達とニューロン形成の関係を明らかにする予定である。具体的には、BrdUを用いたニューロンの発生時期、細胞数の解析、さらに詳しい分子マーカーを用いたcalbindin陽性ニューロンの移動、局在、さらには細胞死の解析を行い、GABAシグナルとの接点を時間的空間的に明らかにする。さらに、VGAT KOマウスにおいて認められた後角の異常も、後角を構成するニューロンの細かい分子マーカーを複数用いて細分化し、また、後角へ入力する線維を染色してその異常の実態を明らかにし、GABAシグナルとの関係を明らかにする予定である。2.本年度最も重要な解析はGAD total KOマウスの解析である。すでに行ってきたKCC2, VGAT KOマウスの解析を参考にしながら同様の解析を加える予定である。以上の解析から、GABAシグナルと形態形成の関係、さらには、GABAそのものが果たす脳形成、形態形成への機能を明らかにする予定である。
動物飼育費用 300千円抗体など 300千円試薬一般 150千円論文別刷など 100千円旅費 50千円合計 900千円
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件)
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