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2012 年度 実施状況報告書

遺伝子改変マウスを用いた幼弱期GABAシグナルの機能に関する分子形態学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 23500413
研究機関琉球大学

研究代表者

高山 千利  琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60197217)

キーワードGABAergic signaling / GAD / VGAT / KCC2 / GABAergic synapse / knockout mouse / spinal cord / calbindin
研究概要

本研究を遂行する上で基準となるGABAシグナルの脊髄における正常発達のデータを確定し、論文として発表した。抑制性ニューロンは4種類の集団で発生した。抑制性ニューロンは前角においては最初GABAニューロンとして発生し、生後グリシンニューロンに変化した。GABAシナプスは前角においては胎令15日から形成され、出生日にかけて急激に増加した。生後は減少し、成熟動物ではグリシン優位になる。一方、後角では胎令17日から形成され、生後急激に増加した。さらに、GABA排出機構も解析し、現在論文投稿の最終段階にある。胎令13日頃(GABAニューロンが局在する時期)、放射状グリアにGAT3が発現し、アストログリアへの分化の過程で発現しつづけた。一方、GAT-1は後角で、プレシナプスにが発現し、GABAの排出に関与することが明らかになった。
以上の結果を踏まえて、現在飼育中のKCC2 KOマウス、GAD67 KOマウス、VGAT KOマウスを同様の方法で解析した。その結果、いずれのマウスにおいても、ニューロンの出現、排出機構の発達、シナプス形成に大きな異常を認めることができなかった。このことから、GABAのシナプス放出やGABAの抑制性とGABA回路との関係はさほど無いと考えられた。しかしながら、2点の異常が認められた。1点目は、VGAT KOマウスにおて、後角の発達が悪く、未熟な状態であった。出生直前の18.5日胎令において、まだ未分化な状態であった。2点目は、KCC2 KO, VGAT KOマウスにおいて、GABAニューロンのサブクラスであるCalbindin陽性ニューロンの数が優位に多く、細胞分化、形成の異常が認められた。
以上のことから、GABAの小胞性の放出、抑制性作用とあるサブクラスのニューロンの発生分化、または後角形成との関係が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで明らかにされたていなかったGABA伝達関連分子欠損と形態異常との関係が明らかになった点は非常に大きな発見と言える。この点は、当初の研究予定にない事項であり、さらに研究を進める必要がある。
そして、GABAそのものの機能解析へと移ることができる。

今後の研究の推進方策

1.GABA伝達の障害、GABAが抑制性に働かないことによる異常が発見された。当初の研究計画にはない新規の実験を1年間で行う予定である。異常発生のメカニズムを明らかにし、GABA伝達とニューロン形成の関係を明らかにする予定である。具体的には、BrdUを用いたニューロンの発生時期、細胞数の解析、さらに詳しい分子マーカーを用いたcalbindin陽性ニューロンの移動、局在、さらには細胞死の解析を行い、GABAシグナルとの接点を時間的空間的に明らかにする。さらに、VGAT KOマウスにおいて認められた後角の異常も、後角を構成するニューロンの細かい分子マーカーを複数用いて細分化し、また、後角へ入力する線維を染色してその異常の実態を明らかにし、GABAシグナルとの関係を明らかにする予定である。
2.本年度最も重要な解析はGAD total KOマウスの解析である。すでに行ってきたKCC2, VGAT KOマウスの解析を参考にしながら同様の解析を加える予定である。
以上の解析から、GABAシグナルと形態形成の関係、さらには、GABAそのものが果たす脳形成、形態形成への機能を明らかにする予定である。

次年度の研究費の使用計画

動物飼育費用  300千円
抗体など    300千円
試薬一般    150千円
論文別刷など  100千円
旅費       50千円
合計      900千円

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Decreased tonic inhibition in cerebellar granule cells causes motor dysfunction in a mouse model of Angelman syndrome.2012

    • 著者名/発表者名
      Egawa K, Kitagawa K, Inoue K, Takayama M, Takayama C, Saitoh S, Kishino T, Kitagawa M, Fukuda A.
    • 雑誌名

      Sci Transl Med.

      巻: 5;4(163) ページ: 163ra157

    • DOI

      10.1126/scitranslmed.3004655

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Possible involvement of galectin-3 in microglial activation in the hippocampus with trimethyltin treatment.2012

    • 著者名/発表者名
      Yang M, Kim J, Kim T, Kim SH, Kim JC, Kim J, Takayama C, Hayashi A, Joo HG, Shin T, Moon C.
    • 雑誌名

      Neurochem Int.

      巻: 61(7) ページ: 955-62

    • DOI

      10.1016/j.neuint.2012.09.015. Epub 2012 Oct 10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Distinct development of GABA system in the ventral and dorsal horns in the embryonic mouse spinal cord.2012

    • 著者名/発表者名
      Kosaka Y, Kin H, Tatetsu M, Uema I, Takayama C.
    • 雑誌名

      Brain Res.

      巻: 1486 ページ: 39-52

    • DOI

      10.1016/j.brainres.2012.10.003. Epub 2012 Oct 5.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Brown rice and its component, γ-oryzanol, attenuate the preference for high-fat diet by decreasing hypothalamic endoplasmic reticulum stress in mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Kozuka C, Yabiku K, Sunagawa S, Ueda R, Taira S, Ohshiro H, Ikema T, Yamakawa K, Higa M, Tanaka H, Takayama C, Matsushita M, Oyadomari S, Shimabukuro M, Masuzaki H.
    • 雑誌名

      Diabetes.

      巻: 61(12) ページ: 3084-93

    • DOI

      10.2337/db11-1767. Epub 2012 Jul 23.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] GABA/glycine signaling during degeneration and regeneration of mouse hypoglossal nerves.2012

    • 著者名/発表者名
      Tatetsu M, Kim J, Kina S, Sunakawa H, Takayama C.
    • 雑誌名

      Brain Res.

      巻: 1446 ページ: 22-33

    • DOI

      10.1016/j.brainres.2012.01.048. Epub 2012 Jan 28.

    • 査読あり
  • [学会発表] Developmental changes in GABA signaling in the embryonic trigeminal nucleus2012

    • 著者名/発表者名
      金武秀道、高山千利
    • 学会等名
      第11回アジア太平洋神経化学会大会・第55回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      20120930-20121002
  • [学会発表] Development of Embryonic mouse spinal cord.2012

    • 著者名/発表者名
      砂川昌信、金正泰、高山千利
    • 学会等名
      第11回アジア太平洋神経化学会大会・第55回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      20120930-20121002
  • [学会発表] マウス胎児脊髄における発達変化2012

    • 著者名/発表者名
      金正泰、砂川昌信、高山千利
    • 学会等名
      第35回日本神経科学大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] マウス胎児脊髄におけるGABAシステムの発達2012

    • 著者名/発表者名
      高山千利、小坂祥範
    • 学会等名
      第35回日本神経科学大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] 発達期小脳皮質のグリアからのGABA放出はトランスポーターで制御される2012

    • 著者名/発表者名
      吉田祥子、山田ひかり、栗本侑依、小林和仁、高山千利、山本清二、福田敦夫、穂積直裕
    • 学会等名
      第35回日本神経科学大会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] マウス視床下部におけるGABA作動性神経回路の形成過程

    • 著者名/発表者名
      小林雅人、清水千草、高山千利
    • 学会等名
      第118回日本解剖学全国学術集会
    • 発表場所
      サンポートホール高松・かがわ国際会議場
  • [学会発表] 視床下部におけるGABA作動性神経回路の形態学的解析

    • 著者名/発表者名
      新崎綾、清水千草、高山千利
    • 学会等名
      日本解剖学会第68回九州支部学術集会
    • 発表場所
      久留米大学

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公開日: 2014-07-24  

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