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2012 年度 実施状況報告書

脊髄損傷モデルにおける軸索再生現象の比較解剖学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 23500414
研究機関横浜市立大学

研究代表者

船越 健悟  横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60291572)

キーワード脊髄損傷 / 再生医学 / 比較解剖学
研究概要

「キンギョ脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析」について、これまでに、脊髄切断後の再生軸索は、線維性瘢痕に侵入したのち、瘢痕部に形成されるラミニン陽性の基底膜にコーティングされた細管に沿って伸長し、瘢痕部を通過することが明らかになっている。この細管にはグリア線維も侵入してくることから、瘢痕内における再生軸索の伸長にはグリア線維が関わっている可能性が考えられた。しかし、再生軸索とグリア線維の侵入、細管の形成の過程を経時的に調べたところ、再生軸索はグリア線維の存在の有無に関わらず、瘢痕内を伸長することが明らかになった。
また、より詳細な細管の構造や、細管と再生軸索の関係を明らかにするために、瘢痕部の超微細形態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、軸索は1本から数本の単位でシュワン細胞に包まれており、シュワン細胞の外側には基底膜が存在することが明らかになった。これらのことから、脊髄切断後に神経根から遊走してきたシュワン細胞が再生軸索の伸長に関わっており、光学顕微鏡で観察された細管構造の形成にもシュワン細胞が関わっている可能性があることが示唆された。
「ラット脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析」について、これまでに、脊髄を完全切断したモデルにおいて、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投与した場合、再生軸索は瘢痕部に形成される細管に沿って吻尾方向に伸長することが認められている。再生軸索と細管のより詳細な関係を明らかにするために、瘢痕部の超微細形態を透過型電子顕微鏡で観察したところ、再生軸索はほぼすべてシュワン細胞に取り囲まれており、それらは、血管やそれを取り巻くグリア細胞の周りに数多く存在していた。このことから、光学顕微鏡で観察された細管構造は血管とグリアから形成されており、軸索再生に関わっている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画していた研究目的の6つの項目のうち、24年度に遂行したのは、①キンギョ脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、④ラット脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、⑥瘢痕部の軸索再生現象の微細形態学的解析、の3項目だけだった。しかし、この3項目については、新しい知見が得られるなど、おおむね順調に進展していると考えている。④ラット脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析については、軸索再生を促進させるために、当初計画では、chondroitinase ABC、鉄キレート剤などの投与を計画していたが、23年度にSSRIの投与がある程度の効果をもつことが認められたため、SSRI投与群を中心に解析することとした。
上記3項目の実験を優先させたため、②キンギョ脊髄圧迫モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、③両棲類脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、⑤ラット脊髄挫滅モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、の3項目の実験は中断、延期している。このため、最終的な評価は(3)遅れている、とした。

今後の研究の推進方策

25年度は、24年度の研究を継続し、①キンギョ脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、④ラット脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、⑥瘢痕部の軸索再生現象の微細形態学的解析、の3項目を中心に実験を遂行してゆく予定である。特に、⑥瘢痕部の軸索再生現象の微細形態学的解析、については最も重点を置くこととし、細管構造など光学顕微鏡で得られた知見との関係を探るために、免疫電顕による観察を行う予定にしている。
一方、②キンギョ脊髄圧迫モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、③両棲類脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、⑤ラット脊髄挫滅モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、の3項目については、より確実な研究目的の達成を目指すために、24年度と同様に、優先的に取り組む項目からは除外することとしたい。③両棲類脊髄切断モデルにおける軸索再生および瘢痕部の組織学的解析、については、余裕が生じた段階で、実験の再開を検討する予定である。

次年度の研究費の使用計画

24年度の繰越金が生じた理由は、消耗品が予定より安価に購入できたことによる。繰越金は、25年度の所要額と合わせて、免疫組織化学に用いる抗体や試薬、電子顕微鏡試料の作成に必要な試薬など、消耗品費(物品費)に、直接経費の大部分を振り分ける予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 脊髄損傷部を通過する再生軸索についての電顕的観察2013

    • 著者名/発表者名
      船越健悟、望月優暁、滝口雅人、武田昭仁、跡部好敏
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会第69回学術講演会
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク(大阪府)
    • 年月日
      20130520-20130522
  • [学会発表] 魚類の脊髄切断後において実質内に出現する結合組織の組織修復への関与2013

    • 著者名/発表者名
      武田昭仁、跡部好敏、船越健悟
    • 学会等名
      第118回日本解剖学会全国学術集会
    • 発表場所
      サンポートホール高松(香川県)
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] ラット脊髄損傷部瘢痕組織に生じる筒状構造物についての透過電顕観察

    • 著者名/発表者名
      跡部好敏、武田昭仁、滝口雅人、大垣福太朗、船越健悟
    • 学会等名
      医学生物学電子顕微鏡技術学会 第29回学術講演会
    • 発表場所
      神奈川歯科大学(神奈川県)

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公開日: 2014-07-24  

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