「キンギョ脊髄損傷モデル」に関してこれまでに、脊髄半切モデルでは損傷部に線維性瘢痕組織が形成されるものの、やがて瘢痕内にラミニン陽性の管状構造がつくられ、その中を再生軸索が貫通する、また管状構造の内腔は徐々に拡大し、それとともに管内を通過する再生軸索の数も増加するといった現象が確認されていた。研究期間内に、再生軸索と管状構造との関係を損傷初期を中心に経時的に調べたところ、再生軸索はあらかじめ作られた管状構造の中を通過するのではなく、再生軸索の瘢痕内への侵入に伴って管状構造が形成されてゆくことが明らかになった。また、瘢痕部を電子顕微鏡で観察したところ、管状構造の壁は瘢痕内に侵入したグリア線維によって作られており、こういったグリア線維と線維性瘢痕組織との間には基底膜が存在することから、ラミニンは基底膜に発現したものであると推測された。また、また、管状構造の内部には多数の有髄線維も認められたことから、髄鞘化に関わる支持細胞も管状構造内に侵入してくることも明らかになった。一方、脊髄圧迫モデルについては、損傷を加えてから運動機能が回復するまでの期間が半切モデルよりも短いことが明らかになったが、十分な組織学的解析はできなかった。 「両棲類脊髄切断モデル」に関しては、これまで無尾両棲類では再生がおきないとされていたが、アフリカツメガエルで確かめたところ、損傷部を越えて軸索が再生することが確かめられた。再生軸索は中心管周囲を通過しており、瘢痕部を貫通するような線維は認められなかった。 「ラット脊髄切断モデル」については、脊髄を完全切断したモデルにおいて、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投与した場合、再生軸索は瘢痕部に形成される管状構造に沿って吻尾方向に伸長することが確認された。このような管状構造は、損傷後5-7日で観察されるようになることが明らかになった。
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