研究課題
申請者らは、これまでの研究から代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ7遺伝子欠損マウス(mGluR7 KO)において、性行動、攻撃行動などの社会的行動、および恐怖反応の異常があることを見いだしている。本研究はこれらの行動の異常をおこすメカニズムを多角的に解析することにより、社会的行動に必要な神経回路、シナプスの調節機構の理解を深めることを目的とする。攻撃行動に焦点を絞って解析をすすめた。嗅覚は齧歯類の社会行動に重要な役割を果たす。雄の尿、あるいは生食を含ませた脱脂綿を同時に提示して嗅覚嗜好性を解析したところ、wild-typeでは雄の尿の臭いをかぐ時間が長いのに対し、mGluR7 KOにはそのような嗜好性は認められなかった。そこで、尿のにおいによって誘導されるc-fos発現を解析した。wild-typeと比較して、mGluR7 KOでは分界条床核におけるc-fos発現が低下していた。そこで、mGluR7の選択的アンタゴニストであるMMPIPを分界条床核に局所投与したところ、攻撃行動が抑制された。これらの結果は、分界条床核に存在するmGluR7が副嗅覚系の情報伝達に重要な役割を果たすことにより、攻撃行動を制御していることを示している。また、分界条床核におけるc-fosの低下はシナプス前膜に存在するmGluR7が神経核の興奮を増強させる働きを持つことを示唆するものであり、今後神経回路内でのmGluR7による情報の調節様式を明らかにすることは、神経の調節メカニズムの解明につながると考えられる。
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 111 ページ: 188-193
10.1073
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/anat1/