研究課題/領域番号 |
23500416
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
辰巳 晃子 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90208033)
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研究分担者 |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アストロサイト / 視床下核 / ドパミン / パーキンソン病 / チャネルロドプシン / Olig2 / GFP |
研究概要 |
本研究では、グリア細胞を標的とした新しい見地からパーキンソン病の新たな治療法の開発に迫ることを目的としている。当該年度は、視床下核のアストロサイトと神経細胞活動の関係解明を目指した。1)ドパミン受容体D1/D2を活性化するPDE10A2遺伝子プロモーター下にtetracycline-controlled transactivator(tTA)をノックインしたマウスと、Tet-onシステムによりチャネルロドプシン(Ch2)を発現するマウスを導入した。この2系統の交配により、青光刺激によりドパミン神経が活動しYFPを発現するマウスを作成した。更にこのマウスと既に系統維持している、転写因子Olig2プロモータ下にGFPを発現するマウス(Oligo2-CreER/ROSA26-loxP-stop-loxP-GAP43EGFP)との交配を行っている。このマウスは人為的にドパミン神経活動を亢進させてYFPでマーキングできるうえに、神経活動更新時のOlig2 発現グリア前駆細胞の分化系譜をGFPにより追うことができる。現在、4系統TGマウスの作成を行っている。また、パーキンソン病モデルを作成すれば視床下核の神経活動亢進モデルにもなる。ドパミン神経毒である6OHDA片側投与によるパーキンソン病モデルマウスの作成も可能となっている。(2)次に(1)とは逆に、アストロサイトの機能低下が神経活動に与える影響について解析するために、局所的にアストロサイトを枯渇させることを目的として、アストロサイト毒であるFluorocitric acid(FC)を視床下核にインジェクションし、マウスの自発運動量他、行動評価を行っている。FC投与はアストロサイトの免疫反応を激減させ、自発運動量の低下も招くことが判った。現在電気生理学的な解析をスタートさせ、その裏付けを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
青光刺激によりドパミン神経が活動しYFPを発現するダブルTGマウス(PDE10A2-tTA/ tetO-C128S)と、転写因子Olig2プロモータ下にGFPを発するダブルTGマウス(Oligo2-CreER/ROSA26-loxP-stop-loxP-GAP43EGFP)との交配を行い、4系統のTGマウスを作製している。解析に充分量のレポーター蛋白(GFP,YFP)を発現させるために、ROSA26-loxP-stop-loxP-GAP43EGFP、tetO-C128Sのローカスはホモ化する必要性があることが分かった。現在、交配マウスの中からの前述のローカスをホモ化するために交配を繰り返しており、その解析に予定より少し時間を要している
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今後の研究の推進方策 |
1.前述した4系統TGマウスが完成すれば、青色プローブを線条体部にインジェクションし、光刺激によりドパミン神経活動を亢進させる。活動亢進した細胞はYFPでマーキングされている。この神経活動時にタモキシフェン腹腔投与を行い、Olig2 発現グリア前駆細胞にGFPを発現させる。神経活動後の経時的なGFP発現細胞の解析により、グリア前駆細胞の分化系譜をGFPにより追うことができる。神経活動とグリア(おもにアストロサイト)への分化誘導の関連性を明らかにする。2.青色刺激とは別に、ドパミン神経毒である6OHDA片側投与によるパーキンソン病モデルマウスをOligo2-CreER/ROSA26-loxP-stop-loxP-GAP43EGFPマウスで作成する。パーキンソン病モデルでは視床下核の神経活動が亢進している。グルタミン酸作動性神経でも神経活動とアストロサイトの分化は関連するのか、明らかにする。3.アストロサイト毒のインジェクションによりアストロサイトの枯渇に成功した。このことが神経細胞活動にどう影響するのか、電気生理的な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.TGマウスの飼育、系統維持にかかる費用が継続的に必要である。2.電気生理的解析を行う為に、共同実験者(自然科学研究機構 生理学研究所)への出張を必要とする。3.免疫組織化学的解析のため、抗体等の試薬が必要である。
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