研究課題/領域番号 |
23500416
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
辰巳 晃子 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90208033)
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研究分担者 |
和中 明生 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90210989)
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キーワード | アストロサイト |
研究概要 |
視床下核は現在パーキンソン病の外科治療として日本を含め世界中でもっとも広く行われている脳深部刺激療法のターゲット部位である。しかしこの領域を電気刺激することで症状が軽減する理由については未だ不明の点が多く、又、情動などに重要な影響を与える可能性も明らかになってきている。本研究では、視床下核のグリア細胞による神経活動の制御機構を明らかにし、グリア細胞を標的とした新しい見地からパーキンソン病の新たな治療法の開発に迫る事を目的にしている。 これまでに私達はトランスジェニックマウス(Olig2cre-GFP)を用いた実験により、大脳基底核の視床下核で、グリア細胞(アストロサイト)が自発運動量の制御に強く関与する事を見出した。そしてこのアストロサイトが内在性のものではなく、神経活動依存的にグリア前駆細胞(Olig2細胞)から分化するものである事を確認している。 そこで当該年度はこのTGマウスにvoluntaryに2週間 Wheel runningを行わせ、視床下核を含む大脳基底核の神経活動を亢進させてOlig2由来アストロサイトの動態をGFPを指標に解析した。その結果、アストロサイトは神経活動に応じてその突起を複雑化する形態変化を示すことを見出した。 次にこのマウスを用いて片側パーキンソン病モデルマウスを作成し、片側的に視床下核ニューロンの亢進を促し、アストロサイトの動態についてGFPを指標に解析しようと試みた。片側パーキンソン病モデルマウスは黒質(SNc)への6-OHDA 注入により作成した。このマウスにおけるアストロサイトの動態についての解析は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
片側パーキンソン病モデルマウスの確立においてやや計画より遅れている。 組織学的には片側的なドーパミンニューロンの欠落を確認できるものの、視床下核(を含む大脳基底核)の片側的な神経活動のアンバランスが顕著には生じていない。ドーパミン受容体のアンタゴニストであるアポモルフィン、あるいはドーパミン放出を増加させるメタンフェタミンを投与し、その効果を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
片側パーキンソン病モデルマウスの確立を進める一方で、グリア前駆細胞がニューロンの活動にどのような影響を与えるのか、組織学的・行動学的に解析するために以下の2系統のマウスを準備している。 ①Olig2-CreER:: ChR2(H134R)-EYFP ROSA26 遺伝子座にChR2(H134R)-EYFP fusion gene 配列を遺伝子ノックインしたマウス(Creリコンビナーゼが作用するとCh2-EYFP を発現する)と、既に系統維持しているOlig2-CreERマウスとのダブルトランスジェニックマウス。 ②Olig2-CreER:: eNpHR3.0-EYFP ROSA26 遺伝子座にeNpHR3.0-EYFP fusion gene 配列を遺伝子ノックインしたマウス(Cre リコンビナーゼが作用するとeNpHR3.0-EYFP を発現する)と、Olig2-CreERとのダブルトランスジェニックマウスマウス。 ①は、olig2由来グリア前駆細胞がチャネルロドプシン(Ch2)を発現し、この細胞は青光刺激により脱分極する。また②はグリア前駆細胞がハロロドプシン(HR)を発現し、この細胞は黄色刺激により塩素イオンを細胞内に取り込み興奮を抑制する。 これらマウスを用いて、olig2由来アストロサイトの活性・抑制による神経活動の制御についてその相互関係を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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