研究課題/領域番号 |
23500419
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
清蔭 恵美 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30543392)
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キーワード | 嗅覚神経回路 |
研究概要 |
マウス嗅球の表面には糸球体と呼ばれる構造があり、匂い入力情報処理を行う機能的単位と考えられている。糸球体を構成するニューロンは様々な化学物質を含有しているが、なかでもドーパミン合成酵素tyrosine hydroxylase (TH)を発現しているニューロンに着目し、THニューロンが構成するシナプスを解析することでドーパミンと嗅覚機能との関わりを解明することが本研究の目的である。そこで、平成24年度は、THの発現をgreen fluorescent protein(GFP)で置き換えたトランスジェニックマウス(TH-GFPマウス)を用いて、THニューロンの免疫染色後、電子顕微鏡連続切片法により単一のTHニューロンの三次元再構築を行い、そのTHニューロンに見られるシナプスの空間的な分布と定量解析を行なった。定量解析の結果、入力シナプスのうち約60%がolfactory nerve (ON)からで30%がnon-ONからの興奮性シナプスであった。これらシナプスの空間的な分布をみると、多数のONからのシナプスはTHニューロン細胞体から約15~30m離れた突起上に見られた。これに対し、少数のnon-ONからの入力は、細胞体及び10m以内の突起にシナプスしていた。これまでの結果から、シナプス数の多さがシナプス効果を示すものではなく、細胞体近傍突起への少数のnon-ONからの入力が効果的にシナプス電位を伝達することが推測された。また現在、non-ONのニューロン同定に向けてsindbis virus in vivo injection法を用いての解析を進めており、投射ニューロンであるmitral cellやtufted cellからの入力シナプスについても定性・定量解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、TH ニューロンの三次元再構築を行いシナプス分布の解析を行っている。さらに解析細胞数を増やし、これまでに報告された電気生理との結果を踏まえてTH ニューロンが構成する神経回路について深く考察したい。また、Sindbis virus を用いた投射ニューロンへの感染実験も軌道に乗り、免疫電顕用にTH ニューロンと投射ニューロンをそれぞれ標識するための条件検討も進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、過去2年間で行ってきた実験結果の精度を上げ、成果をまとめることを目標とする。具体的には、嗅球糸球体内におけるTHニューロンの三次元再構築数とシナプス定量数を増やし、データの正確性を高めて行く。また、ウィルス感染法により単一の投射ニューロンを蛍光標識させてTHニューロンへ入力シナプスを形成するプレ側ニューロンの同定を行うことでより詳細な神経回路の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費について、海外メーカーに発注していた抗体の納期が延び、予定していた投射ニューロン標識の予備実験が遅れたため次年度使用額が生じた。次年度使用額7,281円は平成25年度請求額と合わせ、抗体やトレーサー等の各種消耗品に加え、トレーサー及びウィルス注入実験に必要なマイクロマニピュレーター等の周辺備品の購入を計画している。また、これまでの研究の成果をまとめ、それを論文や学会等で発表したいと考える。
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