研究課題/領域番号 |
23500424
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
森 文秋 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60200383)
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研究分担者 |
丹治 邦和 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10271800)
若林 孝一 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50240768)
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キーワード | TDP43 / ストレス顆粒 / ALS / FUS / Optineurin / Ubiquilin2 / CHMP2B |
研究概要 |
ストレス顆粒は、ストレス環境下で、RNAとRNA結合タンパク質によって細胞質に形成され、異常なタンパク質の集積を防ぐ。本研究では、TDP-43プロテイノパチーにおけるストレス顆粒の組織分布、細胞内局在、さらに酸化ストレスの負荷あるいは減弱時のストレス顆粒の動態を調べることにより、RNA結合タンパク質であるTDP-43の封入体形成過程、Cysteine protease inhibitor、ブニナ小体、神経細胞死との関連を明らかにし、TDP-43プロテイノパチーにおけるストレス顆粒の形成機構とその意義を解明することを目的としている。TDP-43プロテイノパチーのひとつである筋萎縮性側索硬化症(ALS)は通常孤発性であるが、家族性ALS(fALS)では15種の原因遺伝子が同定されており、そのコード蛋白(fALS関連蛋白)はfALSの神経細胞に封入体として蓄積している。これらのうち、FUSなどいくつかのfALS関連蛋白は、ALS以外の神経変性疾患の封入体にも認められる。そこで、種々の神経変性疾患の剖検脳組織におけるfALS関連蛋白の免疫反応性について検討した。①15種中8種のfALS関連蛋白(FUS、TDP-43、FIG4、Optineurin、VCP、Ubiquilin-2、SIGMAR1、 CHMP2B)が種々の頻度と組み合わせで神経変性疾患の細胞内封入体に存在していた。これらfALS関連蛋白は、ストレス顆粒の形成に関連し、DNA/RNA代謝、細胞内蛋白分解、細胞内輸送などの機能を有する。fALS関連蛋白の細胞内封入体への局在は、本来、果たすべき機能が障害されていることを示唆している。fALS関連蛋白は、ストレス顆粒と同様に、ALS以外の神経変性疾患の病理発生機序にも関与している可能性があり、fALS関連蛋白を標的とした治療法開発に役立つ可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALSの運動ニューロンにおけるブニナ小体、TDP-43封入体、Cystatin C免疫染色性とストレス顆粒の関連性について明らかにした。さらに、ストレス顆粒の形成に関連する家族性ALSの原因遺伝子タンパク質が、AL以外の神経変性疾患の異常構造物に発現することを包括的に検証した。研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、研究を推進する予定で、TDP-43遺伝子変異を導入したTGマウス(A315TTARDBP-TG; Jackson Lab.)並びに若年性ALS患者のTDP-43遺伝子変異(G348C)を導入したTGマウス(G348CTARDBP-TG)を用い、酸化ストレス負荷時のTGマウスにおけるSGの動態ならびに酸化ストレス減弱時のTGマウスにおけるSGの動態を検討する。平成25年度の後半では、これまでの研究を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも、試薬関係の予算が少なく済んだため821,132円を次年度に使用することとした。酸化ストレス負荷時のTGマウスにおけるSGの動態を調べる目的で、脳定位装置を用いて、TGマウス(8週齢)の側脳室内あるいは扁桃核内に酸化ストレスを誘発する薬剤として15d-PGJ2を注入する。その後、①行動学的解析、②生化学的解析、③ISH法によるmRNA発現解析、④免疫組織化学的解析を行う。さらに、free radical scavengerであるエダラボン投与の有効性を確認するため、TDP-43TGマウス(A315TTARDBP並びにG348CTARDBP-TG)が、歩行障害などの症状を発症後、1から2週間にわたり毎日エダラボンを腹腔内投与する。行動学的解析を行いながら、投与開始後1, 2, 4, 8週時に、SGマーカー、NGF、TDP-43、Cystatin C、神経細胞死マーカーに関して、生化学的および免疫組織化学的解析を行う。
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