研究課題
αシヌクレインはシナプス末端に局在し、神経伝達物質の貯蔵および放出の調節に関与することが示唆されている。αシヌクレインはタンパク質分解酵素で容易に可溶化されるが、シヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症および多系統萎縮症)では、不溶性となり、本来の生理的機能が損なわれる。このことがシヌクレイノパチーの病因の一つと考えられている。本研究において、不溶性αシヌクレインの結合タンパク質の一つとして新規ユビキチン様タンパク質NUB1を同定した。本研究では、異常αシヌクレインに焦点を当て、以下のことを明確にすることを目的とする。(1)多量に存在する異常αシヌクレインの特徴(結合タンパク質、毒性、オリゴマーとの関連)を明らかする。(2)NUB1およびシヌクレイン遺伝子改変動物を用い、生体内における異常αシヌクレインの意義を明らかにする。進行状況および結果(1)に関しては作製したNUB1抗体を用いて、免疫沈降後、30種類以上の抗体を用いてスクリーニングをおこなったところ、p62/sequestosome1との結合を確認した。興味深いことに、DLBではNUB1-p62/sequestosome1結合量が増加しており、更なる検討をおこなっている。(2)順調にNUB1およびシヌクレインのダブル遺伝子改変マウスが誕生し、現在、行動観察(トラクションメーター法による筋力測定、水迷路試験)をおこなっている。また病理組織学的検索をαシヌクレイン、ユビキチン、NUB1を含めて30種類以上の抗体を用いて行っている。興味深いことに興奮性シナプス末端に顕著に異常αシヌクレインが蓄積していることを見出している。さらに生化学的に解析を行うための材料を集めている段階である。
2: おおむね順調に進展している
主に解析方法として、ヒト試料およびモデル動物を利用している。ヒト試料を用いた生化学的、病理学的解析では当初の予定通り、結合タンパク質を同定することができ、さらに解析を進めている途中である。一方、モデル動物は計画通り誕生し、現在、行動観察および生化学的解析用の試料を集めている。試料が準備でき次第、次のステップへ移行予定である。
予定通り、ヒト試料を用いた解析を継続しつつ、動物の個体数(少なくとも10例)が整い次第、生化学的解析を行う予定である。動物の行動観察は引き続き行う。
(A)結合タンパク質の同定すでに一回目の実験において、p62/sequetosome-1 を同定した。今回確認のため、再度再度行う。脳抽出物は、DLBの大脳皮質(約5g)および正常対照脳を用いる。ショ糖密度勾配遠心後、1mlずつ分画する。Fraction-1,5,8,12,14,16からシヌクレイン抗体を用い免疫沈降、精製する。予備実験で既に抗体への非特異的な吸着を最小限にする条件検討を行っている。大型電気泳動槽を利用して電気泳動を行い、DLB例に特異的なスポットの切り出し後、質量分析装置を利用する。同定されたタンパク質をもとに、必要な場合はcDNAをクローニングする。作製した抗体の特異性を確認後、ヒト剖検脳組織の免疫染色ならびに脳抽出物のWestern blot解析を行う。(B)分子量の推定(オリゴマーとの関連)上述の各Fractionをゲル濾過カラムで分子量ごとに分画する。シヌクレイン抗体を用いてスロットブロット解析を行い、対照例では認められない陽性シグナルの出現する分子量を明らかにする。
すべて 2011
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J Neuropathol Exp Neurol.
巻: 70 ページ: 879-889.
10.1097/NEN.0b013e3182303745