シヌクレイノパチー脳における異常αシヌクレインの意義と結合タンパク質の役割

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 23500425
• 研究機関: 弘前大学
• 研究代表者: 丹治 邦和 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10271800)
• 研究分担者: 若林 孝一 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50240768)
• キーワード: 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / パーキンソン病 / タンパク質分解 / レビー小体型認知症

研究概要

シヌクレイノパチー（パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症）では、アルファーシヌクレイン（a-syn）の異常蓄積が細胞内の胞体内、樹状突起および軸索末端に認められる。その蓄積機序として細胞内分解システムの機能低下や障害が示唆されており、実際にオートファジーの基質（p62、Keap1、NBR1など）やプロテアソーム関連タンパク質（NUB1、TRIM9）が正常対照例と比較して、質的および量的に異なることをこれまでに報告してきた。特に、NUB1はシヌクレイノパチーの病態に深く関与しており、a-synの異常蓄積と酷似した蓄積分布を示す。以上の結果を踏まえ、今回の研究では、異常a-synに果たすNUB1の役割を明らかにするために遺伝子改変マウスを用いて行動学的および病理学的に検討を行った。作製したNUB1トランスジェニック（Tg）マウスは行動学的および病理的解析には異常は認められなかった。次にNUB1/ a-synダブルTgマウスを作製し、行動学的および病理学的に検討したが、a-syn Tgマウスとの違いは認められなかった。これらの結果から、以下二点が明らかとなった。生体内でNUB1は発現亢進しても異常は起こさないこと。NUB1は異常a-synと結合するが、その分解をするには不十分、もしくは分解しないことが示唆された。その後の検討により、NUB1にはもう一つアイソフォームとしてNUB1Lが存在する。特にNUB1Lには異常分子との結合部位が３つ存在する。一方、NUB1はその結合部位が２つである。今後、NUB1L に焦点を絞り検討をすすめていく予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Carnosic acid suppresses the production of amyloid-beta 1-42 and 1-43 by inducing an alpha-secretase TACE/ADAM17 in U373MG human astrocytoma cells. (2014)
  • 著者名/発表者名: Yoshida H, Meng P, Matsumiya T, Tanji K, Hayakari R, Xing F, Wang L, Tsuruga K, Tanaka H, Mimura J, Kosaka K, Itoh K, Takahashi I, Imaizumi T
  • 雑誌名: Neurosci Res 巻: 79 ページ: 89-94
  • DOI: 10.1016/j.neures.2013.11.004
  • 査読あり
• [雑誌論文] Accumulation of the sigma-1 receptor is common to neuronal nuclear inclusions in various neurodegenerative diseases. (2014)
  • 著者名/発表者名: Miki Y, Mori F, Kon T, Tanji K, Toyoshima Y, Yoshida M, Sasaki H, Kakita A, Takahashi H, Wakabayashi K
  • 雑誌名: Neuropathology 巻: 34 ページ: 148-158
  • DOI: 10.1111/neup.12080
  • 査読あり
• [雑誌論文] ALS-associated protein FIG4 is localized in Pick and Lewy bodies, and also neuronal nuclear inclusions, in polyglutamine and intranuclear inclusion body diseases. (2014)
  • 著者名/発表者名: Kon T, Mori F, Tanji K, Miki Y, Toyoshima Y, Yoshida M, Sasaki H, Kakita A, Takahashi H, Wakabayashi K
  • 雑誌名: Neuropathology 巻: 34 ページ: 19-26
  • DOI: 10.1111/neup.12056
  • 査読あり
• [雑誌論文] FUS co-localizes with polyglutamine, but not with TDP-43 in neuronal intranuclear inclusions in spinocerebellar ataxia type 2. (2013)
  • 著者名/発表者名: Mori F, Toyoshima Y, Tanji K, Kakita A, Takahashi H, Wakabayashi K
  • 雑誌名: Neuropathol Appl Neurobiol 巻: 999 ページ: 999-999
  • DOI: 10.1111/nan.12075
  • 査読あり
• [学会発表] Accumulation of autophagic adaptor protein, p62/sequestosome 1, in the brains of Alzheimer’s disease (2013)
  • 著者名/発表者名: Kunikazu Tanji, Tomoh Matsumiya, Atsushi Maruyama, Saori Odagiri, Fumiaki Mori, Ken Itoh, Akiyoshi Kakita, Hitoshi Takahashi and Koichi Wakabayashi
  • 学会等名: 15th International Congress of Immunology,
  • 発表場所: Milan, Italy
  • 年月日: 20130822-20130827
• [学会発表] アルツハイマー病とシヌクレイノパチーにおけるストレス防御システム関連タンパク質の検討 (2013)
  • 著者名/発表者名: 丹治 邦和, 丸山 敦史, 小田桐 紗織, 森 文秋, 伊東 健, 柿田 明美, 高橋 均, 若林 孝一
  • 学会等名: 第36回日本神経科学大会
  • 発表場所: 京都市
  • 年月日: 20130620-20130623
• [学会発表] 神経変性疾患脳におけるユビキチンリガーゼKeap1の解析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 丹治 邦和, 丸山 敦史, 小田桐 紗織, 森 文秋, 伊東 健, 柿田 明美, 高橋 均, 若林 孝一
  • 学会等名: 第54回日本神経病理学会
  • 発表場所: 東京都
  • 年月日: 20130424-20130426
• [図書] Autophagy: Cancer, Other Pathologies, Inflammation, Immunity, Infection, and Aging (2013)
  • 著者名/発表者名: Kunikazu Tanji, Fumiaki Mori, Koichi Wakabayashi
  • 総ページ数: 8
  • 出版者: Elsevier Inc.
• [備考] 弘前大学大学院 医学研究科 脳神経病理学講座
  • URL: http://hippo.med.hirosaki-u.ac.jp/web/about_kouza.html