研究課題
蛋白凝集を共通の病態とする神経変性疾患の病態解明をめざして,過去に主としてアルツハイマー病を研究してきた。その結果,アルツハイマー病におけるアミロイドβ蛋白とタウのリン酸化に小胞体ストレスが関与し,その鍵となる細胞内小器官が顆粒空胞変性である可能性が明らかとなった。そこで,蛋白凝集を主病態とする他の神経変性疾患でも同様の病理変化が生じている可能性を考え,αシヌクレインが沈着する多系統萎縮症に注目し,免疫組織化学的研究を行った。その結果,患者脳幹のオリゴデンドログリア内の顆粒空胞変性様構造物中に,リン酸化TDP-43と小胞体ストレスマーカー,更にはリン酸化タウが今日局在していることを見いだした(Neuroreport 237:270-, 2012)。顆粒空胞変性はオートファジーに関連することが示唆され,さらにオートファジーはユビキチン-プロテアソームを介した蛋白分解に関与することから,ユビキチンのE3リガーゼであるSmad ubiquitination regulatory factor1(Smurf1)の発現をアルツハイマー病の患者脳で免疫組織学的に検索したところ,平野小体が特異的に染色された。さらに,培養細胞に平野小体様構造物を人工的に生成させると,やはり同部位にSmurf1の発現が認められた(J Neurol Sci 336:24-, 2014)。平野小体は従来,筋萎縮性側索硬化症,parkinsonism-dementia complex of Guam,アルツハイマー病などで観察されることが知られていたが,その存在意義は不明だった。今回,平野小体がユビキチン-プロテアソームを介する蛋白分解系に関与することが明らかにされたことから,蛋白分解系の異常が蛋白凝集の原因である可能性が示唆された。
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J Neurol Sci
巻: 336 ページ: 24-28
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