研究課題
1.前年度にIDH1変異体とMAP-2eの発現を免疫組織化学的に検討したグリオーマサンプルにおいて、さらなるグリオーママーカー(p53、DCX、nestin)、増殖マーカー(Ki67)、細胞系譜特異的マーカー(GFAP、Olig2、Iba-1)に対する免疫染色を加え、IDH1変異体とMAP-2eの発現と比較した。各腫瘍型においてこれらのマーカーの多くがIDH1変異体と共発現したが、これらマーカーとMAP-2eを共発現し、腫瘍細胞と区別のつかない形態を示す細胞の中に、IDH1変異体陰性の細胞が存在した。このことは、同一 腫瘍組織内において遺伝子背景の異なる腫瘍細胞あるいは腫瘍細胞様の振る舞いを示す反応性コンポーネントが存在することをさらに裏付ける所見であると考えられた。2.IDH1コドン132点変異のスクリーニング法を確立するため、PCRと制限酵素を用いたPCR-RFLP法(Meyer 2010, Brain Pathol)を導入し、グリオーマ細胞株U87MG、U251MG、U373MGにおいて有効性を確認した。
2: おおむね順調に進展している
免疫染色によるスクリーニングをおおむね完了し、当初の仮説の裏付けが得られつつある。また、その結果を確認するための中心的手段となるIDH1コドン132点変異のスクリーニング法を確立した。
光顕レベルで形態上ならびにマーカー発現上の区別がつかないIDH1R132H陽性細胞と陰性細胞の遺伝子背景の異同を検討するために、 選択したパラフィン切片よりマイクロダイセクション法を用いて症例ごとに陽性細胞、陰性細胞に分けて回収し、プールする。それぞ れのプールからDNAを抽出し、全ゲノム増幅法(Qiagen社WGA kitによる)によりDNAを均等に増幅し、以下の実験のサンプルとする。 1.IDH1コドン132点変異の解析:PCRと制限酵素を用いたPCR-RFLP法(Meyer 2010, Brain Pathol)により、免疫染色でIDH1R132H陽性 あるいは陰性となる細胞のR132H変異の有無をスクリーニングする。さらにPCRで増幅されたDNA断片のシークエンシングにより、結果 を確認する。 2.アレイCGHによる染色体の解析:さらに免疫染色でIDH1R132H陽性あるいは陰性となる細胞の遺伝子背景をゲノムワイドに比較する ため、それぞれの分画から得られたDNAの状態を、アレイCGHによって比較検討する。当院のグリオーマサンプルはルーチンで染色体1 番、10番、17番、19番のLOHが解析されているため、IDH1R132H陽性分画、陰性分画のCGHの結果と比較し、対応した結果が得ら れるかを検討する。 以上の方法により、ヒトグリオーマ組織における腫瘍性および非腫瘍性分画の存在パターンにつき形態学的な基礎的知見を得、抗IDH1 R132H抗体出現以降のグリオーマの病理診断における各種組織化学的マーカー使用のあり方について一定の指針を提示する。さらに分 子病理学的所見に基づき、真の治療ターゲットとなる腫瘍幹細胞を組織切片上に同定する試みの端緒とする。
次年度の研究費は、すべて抗体類、分子生物学的解析に必要な試薬類、ディスポプラスチック器具などの消耗品に当てる予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
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巻: 未定 ページ: 未定
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