研究課題
グリオーマ組織標本におけるイソクエン酸脱水素酵素1変異体(IDH1R132H)および各種グリオーママーカーの染色態度を比較することにより、IDH1R132Hのグリオーママーカーとしての特性を検討し、グリオーマの病理診断の精度向上に寄与するとともに、グリオーマ組織構成細胞の多様性をヒト標本において検討し、その生物学的意義を明らかにすることを目的に以下の研究を行った。グレードIIからIVのグリオーマにおいてIDH1R132Hおよびグリオーママーカー(MAP-2e、p53、DCX、nestin)、増殖マーカー(Ki67)、細胞系譜特異的マーカー(GFAP、Olig2、Iba-1)に対する免疫染色を行った。MAP-2eに対する免疫染色では全症例が陽性となり、ほぼ腫瘍細胞特異的な染色が得られた。 IDH1R132H陽性症例において、MAP-2eに対する免疫染色と比較したところ、陽性細胞は概ね一致する傾向にあったが、一部MAP-2e陽性でありながらIDH1R132H陰性の細胞が存在することが明らかになった。また、その他のマーカー群の多くがIDH1変異体と共発現したが、これらマーカーとMAP-2eを共発現し、腫瘍細胞と区別のつかない形態を示す細胞の中に、IDH1変異体陰性の細胞が存在した。MAP-2eは広くグリオーマ細胞に発現する蛋白であるため、同一 腫瘍組織内において遺伝子背景の異なる腫瘍細胞あるいは腫瘍細胞様の振る舞いを示す反応性コンポーネントが存在する可能性が示唆された。このことから、ヒトグリオーマ組織における腫瘍性および非腫瘍性分画の存在パターンにつき形態学的な基礎的知見を得ることができた。また、グリオーマの病理診断の精度向上に寄与するとともに、真の治療ターゲットとなる腫瘍幹細胞を組織切片上に同定する試みの端緒となる知見を得た。
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Neuro Oncol
巻: 16 ページ: 441-448
10.1093/neuonc/not158