研究課題
臨床的解析において、変動する意識レベル、中枢性無呼吸症、幻視が確認され本症における新たな病態が明らかとなった。放射線学的解析において、脳出血の危険因子として知られる微小脳出血がみられることを、近年開発されたMRI磁化率強調法により明らかにした。病理学的検討において、大脳皮質と軟膜の血管にTTRアミロイドの沈着、血管壁の肥厚、内膜増殖による血管腔の狭小化、炎症細胞浸潤(TTR関連血管炎)を認め、血流障害を来していると考えられた。軟膜に著しいアミロイド沈着を認め、脳幹、脊髄においては実質へのアミロイドの浸潤がみられ、神経細胞脱落、軸索障害、脱髄を伴っており、意識障害や、中枢性無呼吸への関与が考えられた。脳室壁において、上衣細胞の消失と脈絡叢由来のTTRによる塊状のアミロイド沈着を認め、また、脳溝の狭小化と脳室の拡大もみられており、髄液の吸収、環流障害の存在と認知機能低下への影響が考えられた。今後、髄液吸収障害を改善させるためのLPシャントによる本症病態改善効果について検討予定である。近年、画像診断と病理所見の対比が注目されているが、本症患者において小脳にMRIのSWI像に一致して、病理学的微小脳出血が確認された。TTRアミロイドによるアポトーシスをタウロウルソデオキシコール酸が抑制することが報告されているが、この誘導体であるウルソデオキシコール酸を本症患者に投与する試験が倫理委員会で承認され、患者への投与を開始した。
2: おおむね順調に進展している
当初、臨床的症候解析、経頭蓋近赤外光脳機能計測装置などによる脳循環自動調節解析、神経細胞障害機構における活性酸素障害、アポトーシス、ミトコンドリア機能異常、小胞体ストレス、オートファジー、Neuro-vascular unit障害の解析、iPS細胞の樹立、脳血管障急性期病院、国内、海外における疫学調査、肝移植や、ウルソデオキシコール酸、ジフルニサル、タファミディスによる治療効果の解析などを予定していたが、2年目において、一部の解析結果が明らかとなり、2013年米国神経学会に採択されて発表も行い、論文も投稿できる状況となっているため。
平成25年度は、本症のさらなる病態解明のため、症例、データを追加し、症候学的検討、病理学的検討、生化学的検討、治療法の開発を継続することに研究費を使用する。また、これまでの研究により明らかになった脳血管炎や、髄液循環障害の存在に対する臨床的治療介入の効果についても検討する。研究結果は、日本神経学会学術大会や、米国神経学会などにおいて発表し、本研究の国際的な発展及び、本症患者の治療法開発に寄与していく。また、経頭蓋近赤外光脳機能計測装置を用いた脳循環自動調節能の評価法の確立も行なっていく。
設備、備品に関しては、当施設に設置されているものを使用する。研究費の多くは試薬等の消耗品購入に使用し、一部研究成果発表のための旅費や、謝金、研究論文発表のための校正費などに使用予定である。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
Amyloid
巻: Suppl 1 ページ: 37-38
10.3109/13506129.2012.678509.
Peripheral Nerve
巻: 23 ページ: 256-257