研究課題/領域番号 |
23500433
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
飯田 有俊 独立行政法人理化学研究所, 骨関節疾患研究チーム, 上級研究員 (10277585)
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)は、進行性の神経変性疾患である。しかし、現在まで病因論は不明で、有効な治療法が全くない。 本研究では、(1) ゲノム解析より単離した新規ALS易罹患性遺伝子ZNF512Bについて、その機能解析を行ない、ALS病態カスケードを明らかにすること、(2) ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、新たな孤発性ALSの遺伝的素因(疾患易罹患性遺伝子)を明らかにすることを目的とした。 (1) ZNF512Bの結合タンパクの検索を行った。文献・データベース検索より候補タンパクを抽出した。解析したタンパクのうち、2種類のタンパクがZNF512Bと結合することを認めた。これらの分子についての遺伝子・ゲノム解析を行っている。 (2) 61万SNPを搭載したSNPアレーを用いてGWASを行った。全例についてSNP型を判定した後、データの品質管理を行った(Hardy-Weinberg平衡検定値、call rate、マイナーアレル頻度等)。同時に集団内における階層化を調べるために、主成分分析やQQプロットを作成した。現在、追加サンプルを用いたreplication studyを行っている。また、ゲノム統計学の手法を用いて、GWAS-SNPアレーに搭載されていない隠れたALS関連SNPの解析も行っている。 その他、臨床データを用いた総合的な解析からZNF512Bが予後規定因子であることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで ZNF512B結合タンパクを2種類同定した。ひとつは、神経細胞保護シグナル経路に関係する分子(Z512BP-1)で、もう一方は核内転写制御にかかわる分子(Z512BP-2)であった。Z512BP-1の遺伝子領域についてSNP地図を作成し、ゲノム関連解析を行った。42ケのtag SNPを用いた関連解析により多重検定をクリアーするSNPを同定した。Z512BP-2の遺伝子領域についても同様にゲノム構造解析からの関連解析を行っている。さらに検体を増やして解析を行う。 GWAS研究に関しては、共同研究機関との連携により、解析可能な検体数が1000検体を越えた。61万SNPを用いたGWAS解析を行い、ALS候補SNPを発見している。検体を追加してreplication study を行っている。さらにGWAS-SNPアレーに搭載されていない隠れたALS関連SNPについても解析を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) ZNF512B結合タンパクの同定と病態カスケードの探索について。ZNF512Bが神経保護シグナル経路に関与するという可能性から、引き続き、培養細胞を用いた強制発現系における細胞内シグナル伝達経路の解析を行う。 結合タンパクを同定し、候補遺伝子アプローチにより解析する。すなわち、当該遺伝子領域の構造解析、変異検索、関連解析を行い、ALSの発症に関与するか否かを調べる。 (2) GWASについて。検体を増やしてreplication studyを行う。関連SNPが発見されたならば、候補領域について詳細なゲノム解析を行う。ALSと関連あるSNPを全て同定し、それらについて機能解析を行う。例えば、ルシフェラーゼアッセイ等を用いて、SNPの違いによるアレル間の差を測定する。プロモーター領域に関連SNPが存在する場合には、感受性SNPと非感受性SNPを持つアレルでの転写能の違いを測定する。イントロン領域にある場合には、遺伝子のプロモーター領域を連結したレポータープラスミドに当該SNPを含むイントロン領域をクローニングし、エンハンサー活性を測定する。さらにゲルシフトアッセイを用いて転写因子と当該エンハンサー領域の結合能を違いを検討する。 (3)候補遺伝子の解析について。現在まで報告のあるALS原因遺伝子、易罹患性遺伝子について、日本人検体を用いた変異検索、およびメタ解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
|