研究課題
多くの神経変性疾患において、神経細胞内のユビキチン化タンパク質の蓄積は共通した病理所見であり、神経毒性をもつ凝集性タン パク質は、p62タンパク質による選択的オートファジーによって分解除去されていると考えられている。本研究では、p62タンパク質の 遺伝子発現を誘導する薬剤のスクリーニング等を行うことにより、p62タンパク質の発現誘導に必要な因子を同定することを目標とし ている。平成24年度はp62遺伝子発現レポーターシステムを導入したNeuro2a細胞を用いて、LOPAC1208を用いて薬剤スクリーニングをおこない、いくつかの薬剤がp62プロモーターを活性化することを見いだした。一次スクリーニングで得られた約80種の薬剤に対して、タンパク質分解に影響があるものをubi-RFPの安定発現株を用いて除外し、さらに内在性p62タンパク質の発現の上昇を指標として2次、3次スクリーニングを行い、p62プロモーターを活性化する薬剤の候補を5つの物質に絞り込んだ。しかしながら、重金属やプロテアソーム阻害剤に匹敵するほどのp62の発現を誘導する化合物は同定できなかった。また、p62の発現を抑制するものについても5つ同定した。p62の発現抑制物質に関しては、p62タンパク質分解を促進するものも含まれている可能性がまだ残っている。プロモーターを活性化/抑制する化合物に対して、今後、濃度依存性や薬剤処理の時間変化などを検討していきたい。
3: やや遅れている
薬剤化合物のスクリーニングを行い、いくつかp62の発現を誘導する物質を見いだしたが、非常に強くp62の発現を誘導する化合物は現時点では得られていない。得られた化合物については、発現誘導の条件検討等をおこないたいと考えている。p62の発現を抑制する化合物に関しては、まだ解析が進んでいない。
スクリーニングにより得られたp62の発現を誘導する化合物と発現を抑制する化合物について、発現制御の条件検討を行うとともに、神経変性疾患のモデル細胞系を用いて、細胞内凝集体の分解促進効率等を解析し、p62の発現誘導と選択的オートファジーの相関についても検討する。
同定された化合物の購入価格が安価であったのと、費用のかかるRNA実験を次年度に繰り越した。そのため、次年度以降に予算を繰り越すことになった。次年度は発現制御の条件決定をレポーターではなくmRNAの発現で評価するため、RT-PCRに必要な試薬を購入する。現在得られている化合物が、モデル細胞系において治療効果が認められれば、神経変性疾患モデルマウスを用いて治療効果を確認する実験を行うため、モデルマウスの飼育費として使用する。また、細胞培養等の実験につかう消耗品も購入する。
すべて 2012
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