研究課題
本研究では神経病理学的手法を用い,認知症と関連する白質小血管病変の検討を行った.認知症はアルツハイマー病などの変性疾患以外に,血管性認知症も多い.また変性型認知症と血管性認知症の合併も少なくない.近年,小血管病変と認知障害との関係は,様々な生活習慣病との関連からも注目されている.23年度は,遺伝性脳血管疾患で本邦で報告が多い,白質病変を有するCARASIL3例を検討した.特に1例は,長期追跡できた稀少例で,詳細な病理学的検討を検討し,単純な動脈硬化ではないことなどを明らかにした.24年度はCARSILの検討を継続し,最終的に頭蓋内血管で弾性板の年輪様多層化,中膜菲薄化,小血管の壁分離などの所見を明らかにした.また,血管性認知症との関連から,高度に認知症が進行する前段階(CDR0.5)における病理学的状態を剖検284例で検討し,脳血管性疾患単独が原因の頻度は34%,脳血管性疾患に他の神経変性疾患を合併した頻度が6%,また加齢により脳血管疾患の頻度が低下していた.25年度は白質の小血管径と変性型認知症病理との関連を検討した.前向き集積した検討可能164例で,Elastica-masson染色で,被殻背側と島回皮質下白質において血管径が400μm未満のものを,1例あたり,両部位3本づつ顕微鏡画像で血管内腔狭窄,血管周囲腔(PVS)を測定し,新規導入した指標(%lumen=血管内腔面積/血管外周面積,PVS ratio=(PVS面積-血管外周面積)/PVS面積で検討.特にアルツハイマー病と関係する神経原線維変化の拡がりと,白質血管内腔の狭小化,老人斑の拡がりと白質PVSの減少が関連した.以上,認知症性疾患における遺伝性脳血管疾患の形態病理を明らかにした.また皮質下白質小血管病理は,アルツハイマー病に代表される病理変化とも一定の関与が示唆された.
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