研究課題/領域番号 |
23500436
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
千葉 陽一 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 病理学部, 主任研究員 (30372113)
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キーワード | 脱髄疾患 / プロスタグランジン / オリゴデンドロサイト |
研究概要 |
平成24年度は、まず新たに当研究室で作製した prostamide/prostaglandin F synthase (PMPGFS) に対する抗体の特異性の検定を行った。PMPGFSを強制発現したHEK293細胞を用いた免疫細胞化学及びウェスタンブロットを行い、新たに作製した抗体が特異的にPMPGFSを認識していることを確認した。この抗体を用いて、ラット由来の初代培養ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアでのPMPGFSの発現を免疫細胞化学、ウェスタンブロットにより評価したところ、ニューロンで強い発現がみられ、各グリア細胞では低レベルの発現がみられた。一方、FPの発現をウェスタンブロット及びRT-PCRで検討したところ、ニューロンとともにオリゴデンドロサイト系譜細胞にも発現が見られた。このことから、げっ歯類脳において産生量の多いエイコサノイドであるPGF2aの主要な産生細胞はニューロンであり、オリゴデンドロサイトはニューロン由来のPGF2aを受けて何らかの応答をしている可能性が考えられた。 また、本年度は、マウス由来のオリゴデンドロサイトの初代培養系の確立を試みた。胎生17日齢のマウス大脳皮質より単離した細胞を、PDGFとbFGFの存在下で培養し、再播種した後、さらにPDGFとbFGF添加培地で増殖させることによりオリゴデンドロサイト前駆細胞を、甲状腺ホルモン入り培地で分化させることにより成熟オリゴデンドロサイトを得ることに成功した。この培養系が確立したことにより、PGF2a産生の有無がオリゴデンドロサイトの生理機能及び病的状態における形質に及ぼす影響を調べるための準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では24年度にPMPGFSノックアウトマウス由来のオリゴデンドロサイトの形質を調べる予定であったが、マウス由来のオリゴデンドロサイトの初代培養系の確立に、当初の予定より時間を要したため、若干の遅れを生じている。ただ、平成24年度中に培養の技術が確立したので、25年度には研究を進展させることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、PMPGFSノックアウトマウスと野生型マウスからオリゴデンドロサイト、ニューロン、アストロサイト、ミクログリアをそれぞれ初代培養し、PMPGFSの中枢神経系での発現細胞についてさらに詳しい解析を行う。オリゴデンドロサイトとその前駆細胞にFP受容体の阻害剤を加えた際の形質についても解析を行う。また、ノックアウトマウス由来のオリゴデンドロサイトの分化、生存、髄鞘形成能について解析を進める。最近、FP受容体が虚血における神経細胞死に関与することが報告されたので、ノックアウトマウスと野生型マウスからニューロンとオリゴデンドロサイトをそれぞれ培養し、試験管内での虚血モデルである酸素グルコース除去や、興奮毒性刺激を加え、虚血時におけるPGF2a産生の病的意義に関しても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
低酸素処理を行うためのチャンバー(1式15万円)を新たに導入する。培養用試薬・消耗品として40万円、抗体や生化学実験用試薬として30万円、実験動物飼育費用として13万円、アルバイト・英文校正の謝金として15万円、論文投稿費用として8万円、学会出張の旅費として7万円を使用予定。
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