研究概要 |
本研究計画の目的は、オリゴデンドロサイト(OL)の生理機能と病態形成におけるプロスタグランジン(PG)F2alphaの役割を明らかにすることである。平成25年度においては、中枢神経系におけるPGF2alphaの主要な合成酵素であるprostamide/prostaglandin F synthase (PMPGFS)ノックアウト(KO)マウスより単離した初代培養OL系譜細胞を用いて、OLにおけるPGF2alphaの機能について検討した。胎生17日齢の野生型(WT)マウス由来のOL前駆細胞(OPC)は、無血清培地(DF+N2+0.1% BSA)にPDGF, bFGFを添加した培養条件で増殖維持が可能であったが、PMPGFS KOマウス由来のOPCは無血清培地に置換して24時間後に死滅した。これに対し、無血清培地中に1 microMのPGF2alphaを24時間毎に添加すると、KOマウス由来のOPCも生存、増殖を維持することが可能となった。PGF2alphaの添加は、無血清培地への置換後48時間はOPCの生存維持に必須であったが、その後はPGF2alphaの添加なしでも生存、分化が可能であったことから、PMPGFS由来のPGF2alphaは、未熟なOL系譜細胞の初期の生存維持に必須である可能性が示唆された。一方、KOマウス由来のOPCを、甲状腺ホルモンを添加した無血清培地で6日間培養して分化誘導すると、WTマウス由来のOPCと同程度の比率でミエリン塩基性蛋白(MBP)陽性の成熟OLが出現した(WT 39.1±4.5%, KO 35.7±1.5 %, n = 3)ことから、PMPGFS由来のPGF2alphaの有無はOL系譜細胞の分化には影響しないことが示唆された。
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