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2013 年度 実施状況報告書

脳内ストレス応答を制御する蛋白質チロシンリン酸化シグナルの解析

研究課題

研究課題/領域番号 23500437
研究機関群馬大学

研究代表者

大西 浩史  群馬大学, 保健学研究科, 教授 (70334125)

キーワード神経細胞 / シグナル伝達 / 脳 / ストレス / 行動
研究概要

脳に強く発現する膜型分子SIRPαが、強制水泳を受けたマウスの脳内で強くリン酸化を受け、またSIRPαとその細胞外リガンドである別の膜タンパク質CD47を欠損した遺伝子改変(KO)マウスでは、強制水泳中の無動時間(=動物のうつ様行動)の増加が見られる。この現象について、前年度までにSIRPαのチロシンリン酸化には強制水泳の際、水に浸ることで起こる低体温が主な原因であることを示し、またSIRPα以外にもカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)などのシグナル分子が低温に応答して神経内でリン酸化状態を変化させることなどを報告した。本年度は、SIRPα-floxマウスとCreリコンビナーゼのトランスジェニックマウスの交配により、前脳神経細胞特異的なSIRPα コンディショナルKOマウスを作製し、このマウスについて強制水泳中の無動時間の解析を行った。このSIRPαコンディショナルKOマウスは、全身性のKOマウスと異なり、無動時間の増加傾向を示さなかった。このマウスでは前脳領域の興奮性神経細胞で特異的にCreが発現しており、これらの細胞でのみSIRPαが欠損していると予想される。すなわち、前脳興奮性神経細胞以外の細胞、例えば、グリア細胞や抑制性神経細胞、前脳以外の神経系、などに発現するSIRPαが全身性KOマウスの表現型に関連する可能性が考えられた。一方で現在、全身性SIRPαKOマウスの脳内でミクログリアの恒常性異常を示すデータが得られつつある。これらの結果から、SIRPαが脳内ミクログリアの恒常性の制御を介して動物の行動制御に関わるという、新たな可能性について検討が必要であると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SIRPαノックアウトマウスの解析を進める中で、非神経細胞に発現するSIRPαの機能が行動制御に重要であるという新たな可能性に着目し、コンディショナルKOマウスを導入した解析に着手できている点は進展として評価できると考える。ミクログリア特異的SIRPαコンディショナルKOマウスについては、当初導入したミクログリア特異的Creマウスは文献で報告されているほどの効果は得られなかったが、速やかに別のミクログリア特異的Creマウスを導入し、新しいコンディショナルKOマウスの作製も進んでいる。以上の様に、計画は必ずしも予定通り進められた訳ではないが、新たな知見も得られ、計画の修正も着実に行われている。また、SIRPαの解析と並行して、SIRPαのリガンドであるCD47の全身性KOマウスについての行動解析のデータを論文としてまとめ、報告することができたことも踏まえ、全体として計画はおおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

今後は、まずミクログリア特異的SIRPαコンディショナルKOマウスを用いて、全身性SIRPαKOマウスでみられた行動異常に対するミクログリアのSIRPαシグナルの関与を明らかにしたい。ミクログリアでCreを発現させることができると報告されていたLysM-Creマウスは、SIRPαについては期待通りのKO効率が得られなかったため別のCreマウスが必要となり、この点が課題であったが、すでにミクログリアで効率的に遺伝子KOできることが報告されている別タイプのCreマウスが準備できており、これを用いることで問題を解決できる予定である。また、低温ストレス応答としてのSIRPαのチロシンリン酸化のメカニズム解析が重要であり、また、SIRPαリン酸化シグナルの機能的意義、特に低温が示す神経保護作用との関連の解析が重要と考えている。

次年度の研究費の使用計画

ストレス応答性の行動制御に関連する脳内チロシンリン酸化タンパク質SIRPαについて検討を進めていたが、当初の予測に反して神経細胞以外の細胞に発現するSIRPα、特にミクログリアに発現するSIRPαが行動制御に関与する可能性を新たに見出しつつある。この発見の重要性を考慮し、この内容について研究を発展させる目的で計画を一部変更して基礎検討、および新しいコンディショナルKOマウスの準備を進めたため、未使用額が生じた。
上記の発見内容について解析を進めるために、現在、ミクログリアに特異的なコンディショナルKOマウスを新たに生産・準備しており、これらの動物について生化学、組織化学、行動生理学的解析を行うために使用する計画である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Autoimmune animal models in the analysis of the CD47-SIRPα signaling pathway2014

    • 著者名/発表者名
      Murata Y, Saito Y, Kaneko T, Kotani T, Kaneko Y, Ohnishi H, Matozaki T
    • 雑誌名

      Methods

      巻: 65 ページ: 254-259

    • DOI

      10.1016/j.ymeth.2013.09.016.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comprehensive behavioral analysis of Cluster of Differentiation 47 knockout mice2014

    • 著者名/発表者名
      Koshimizu, H., Takao, K., Matozaki, T., Ohnishi, H., Miyakawa, T.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0089584

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inflammation-induced proteolytic processing of the SIRPα cytoplasmic ITIM in neutrophils propagates a proinflammatory state2013

    • 著者名/発表者名
      Zen, K., Guo, Y., Bian, Z., Lv, Z., Zhu, D., Ohnishi, H., Matozaki, T., Liu, Y.
    • 雑誌名

      Nat. Commun.

      巻: 4 ページ: -

    • DOI

      10.1038/ncomms3436

    • 査読あり
  • [雑誌論文] SIRPα signaling regulates podocyte structure and function2013

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, S., Tomioka, M., Hiromura, K., Sakairi, T., Hamatani, H., Watanabe, M., Ikeuchi, H., Kaneko, Y., Maeshima, A., Aoki, T., Ohnishi, H., Matozaki, T., Nojima, Y.
    • 雑誌名

      Am. J. Physiol. Renal Physiol.

      巻: 305 ページ: F861-870

    • DOI

      10.1152/ajprenal.00597.2012

    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞質型チロシンホスファターゼShp2による脳機能制御2014

    • 著者名/発表者名
      草苅伸也、齋藤文仁、橋本美穂、柴崎貢志、吾郷由紀夫、小谷武徳、村田陽二、松田敏夫、Benjamin G. Neel、的崎尚、大西浩史
    • 学会等名
      第6回日本プロテインホスファターゼ研究会学術集会
    • 発表場所
      三重大学/津
    • 年月日
      20140220-20140222
  • [学会発表] 腸上皮の恒常性維持におけるチロシンホスファターゼShp2の役割2014

    • 著者名/発表者名
      小谷武徳、山下博成、朴貞河、村田陽二、岡澤秀樹、大西浩史、具英成、的崎尚
    • 学会等名
      第6回日本プロテインホスファターゼ研究会学術集会
    • 発表場所
      三重大学/津
    • 年月日
      20140220-20140221
  • [学会発表] 樹状細胞及び二次リンパ組織の恒常性維持におけるSIRPαの役割2014

    • 著者名/発表者名
      鷲尾健、小谷武徳、レスパティカ ダトゥ、村田陽二、岡澤秀樹、大西浩史、福永淳、錦織千佳子、的崎尚
    • 学会等名
      第6回日本プロテインホスファターゼ研究会学術集会
    • 発表場所
      三重大学/津
    • 年月日
      20140220-20140221
  • [学会発表] SIRPα-CD47 system regulates the homeostasis of dendritic cells in lymphoid tissues2013

    • 著者名/発表者名
      Washio, K., Kotani, T., Respatika, D., Murata, Y., Okazawa, H., Ohnishi, H., Fukunaga, A., Nishigori, C., Matozaki, T.
    • 学会等名
      第42回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ/千葉
    • 年月日
      20131211-20131213
  • [学会発表] 腸上皮の恒常性維持におけるチロシンホスファターゼShp2 の役割 Roles of the protein tyrosine phosphatase Shp2 in maintaining 213 homeostasis of the intestinal epithelium2013

    • 著者名/発表者名
      山下博成、小谷武徳、村田陽二、岡澤秀樹、大西浩史、具英成、的崎尚
    • 学会等名
      第72回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜/横浜
    • 年月日
      20131003-20131005
  • [学会発表] 細胞質型チロシンホスファターゼShp2の成熟脳における機能解析2013

    • 著者名/発表者名
      草苅伸也、橋本美穂、柴崎貢志、吾郷由希夫、松田敏夫、Benjamin G. Neel、小谷武徳、村田陽二、的崎尚、大西浩史
    • 学会等名
      第60回北関東医学会総会
    • 発表場所
      群馬大学刀城会館/前橋
    • 年月日
      20130926-20130927
  • [学会発表] SIRPαによる脾臓T細胞の恒常性の調節2013

    • 著者名/発表者名
      橋本美穂、齊藤泰之、金子哲也、大西浩史、草苅伸也、小谷武徳、村田陽二、岡澤秀樹、的崎尚、
    • 学会等名
      第60回北関東医学会総会
    • 発表場所
      群馬大学刀城会館/前橋
    • 年月日
      20130926-20130927
  • [学会発表] 腸上皮の恒常性維持におけるチロシンホスファターゼShp2の役割 Roles of the protein tyrosine phosphatase Shp2 in maintaining homeostasis of the intestinal epithelium2013

    • 著者名/発表者名
      小谷武徳、山下博成、村田陽二、岡澤秀樹、大西浩史、具英成、的崎尚
    • 学会等名
      第86回日本生化学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜/横浜
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] Roles of the protein tyrosine phosphatase Shp2 in homeostasis of the intestinal epithelium2013

    • 著者名/発表者名
      Kotani, T., Yamashita, H., Murata, Y., Okazawa, H., Ohnishi, H., Matozaki, T.
    • 学会等名
      FASEB meeting
    • 発表場所
      U.S.A
    • 年月日
      20130811-20130816
  • [学会発表] 腸上皮の恒常性維持におけるチロシンホスファターゼShp2の役割2013

    • 著者名/発表者名
      小谷武徳、山下博成、村田陽二、岡澤秀樹、大西浩史、具英成、的崎尚
    • 学会等名
      第12回生体機能研究会
    • 発表場所
      ホテル木暮/群馬県渋川市
    • 年月日
      20130727-20130728
  • [学会発表] Functional Analysis of A non-receptor type protein tyrosine phosphatase Shp2 in the adult brain2013

    • 著者名/発表者名
      Kusakari, S., Saitow, F., Sato-Hashimoto, M., Shibasaki, K., Ago, Y., Matsuda, T., Neel B. G., Takenori, K., Yoji, M., Matozaki, T., Ohnishi, H.
    • 学会等名
      Neuro 2013 第36回日本神経科学大会・第56回日本神経化学大会・第23回日本神経回路学会大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館/京都
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [学会発表] Hypothermia-dependent and -independent effects of forced swim on the phosphorylation satates of signaling molecules in mouse hippocampus2013

    • 著者名/発表者名
      Sato-Hashimoto, M., Hayashi, Y., Kusakari, S., Urano, E., Shigeno, M., Sekijima, T., Kotani, T., Murata, Y., Murakami, H., Matozaki, T., Ohnishi, H.
    • 学会等名
      Neuro 2013 第36回日本神経科学大会・第56回日本神経化学大会・第23回日本神経回路学会大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館/京都
    • 年月日
      20130620-20130623
  • [備考] 群馬大学大学院保健学研究科生体情報検査科学講座大西研究室

    • URL

      http://biosignal.dept.med.gunma-u.ac.jp/

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公開日: 2015-05-28  

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