研究実績の概要 |
前年度までに得られた成果を英文原著論文として発表するため、データをまとめた。現在、論文投稿中である。 本年度行った研究から、CBS+/-及びCBS-/-マウスは、正常マウスに比べてカイニン酸投与によるてんかん誘発刺激に高い感受性を示すことがわかった。古くからCBS遺伝子変異で発症するホモシスチン尿症患者の代表的な神経症状としててんかんが知られるが、その病態は未だ明らかでない。こうした中、さらに我々は、カイニン酸刺激が、CBS-/-マウス大脳皮質及び海馬においてH2AXのリン酸化を顕著に亢進することを見出した。ヒストンタンパク質の一つであるH2AXのリン酸化は、ニューロンや神経幹細胞におけるDNAダメージ修復やエピジェネティックな遺伝子発現制御に関与することが知られる(Nature 451:460-4, 2008; PNAS 108:5837-42, 2011)。また、てんかん発作によって誘導されるエピジェネティックな遺伝子発現制御異常がその病態と深く関わることが指摘されている(J Neurosci 33:2507-11, 2013; J Clin Invest 123:3552-63)。現在までのところ、平常時のCBS-/-マウス脳において、ヒストンタンパク質のメチル化やアセチル化に大きな変動は検出されていないが、てんかん等の病態が惹起する脳内環境変化がホモシステイン代謝異常の背景と相まって、エピジェネティックな遺伝子発現や神経系譜細胞の分化異常を引き起こしている可能性があり、今後これらの関わりについて明らかにしたいと考えている。
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