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2011 年度 実施状況報告書

慢性期脊髄損傷の回復を目指す研究-多能的新規化合物デノソミンの作用機序-

研究課題

研究課題/領域番号 23500439
研究機関富山大学

研究代表者

東田 千尋  富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (10272931)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード脊髄損傷 / 軸索伸展 / アストロサイト
研究概要

脊髄損傷マウスにDenosominを14日間経口投与すると、後肢運動機能が有意に改善した。投与後7日目、14日目と日を追って組織染色を行ったところ、セロトニン陽性の縫線脊髄路の軸索が損傷部位を越えて尾側に伸展することと、アストロサイトが損傷部に増加することを見出した。培養アストロサイトをDenosomin処置した後の培地を培養大脳皮質神経細胞に加えると軸索が伸展した。そこでDenosomin処置によりアストロサイト中で増加するタンパク質として、2次元電気泳動とLC-MS/MS解析によりvimentinを同定した。培養大脳皮質神経細胞にvimentinを処置すると有意に軸索が伸展した。また、脊髄損傷マウスの損傷部位ではvimentinが増加し、vimentinに沿って伸展するセロトニン陽性軸索が増加することも確認した。またDenosomin投与群のグリア瘢痕内では、vimentinを発現するアストロサイトの割合がコントロール群に比べて増加した。一方、軸索伸展の阻害因子であるCSPGを発現するアストロサイトの割合はDenosominによって変化しなかった。以上の結果より、Denosominの脊髄損傷改善作用の機序として、アストロサイトからのvimentin分泌を促進し、それによる軸索伸展作用により運動機能制御に関わる軸索の成長が亢進することが示唆された。23年度の研究により、軸索阻害因子を分泌するアストロサイトの負の側面を正に転換させることが薬物によって可能であるという興味深い知見と、中間径フィラメントであるvimentinに軸索伸展作用があるという新しい事実が発見された。現在、脊髄損傷の急性期から慢性期にわたって、損傷部位でのvimentin発現がどのように変化しているかを検討中であり、vimentinの制御が損傷慢性期の克服に繋がるかどうかを調べる予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Denosomin作用機序の鍵となる分子として、アストロサイトから分泌されるvimentinの役割りを明らかにすることができた。中間径線維であるvimentinは、主としてアストロサイトの骨格因子としての役割が知られてきたが、vimentinが細胞外に分泌され神経細胞にはたらきかけることを示唆する本研究の知見は新規であり、かつ神経細胞とアストロサイトの連関を解明する端緒として大きな意味を持つものである。これは初年度での研究進展の予想を超える非常に興味深い新しい発見である。

今後の研究の推進方策

Vimentinの軸索伸展作用をin vivoでも証明するために、脊髄損傷マウスの損傷部位に直接vimentinを投与して運動機能の改善作用や軸索伸展作用を検討する。また、vimentinによる軸索伸展作用のシグナリングを解析する。さらに、脊髄損傷慢性期で特異的に発現変化する分子の同定を、2次元電気泳動とLC-MS/MS解析により網羅的に行う。Vimentinそのものが、損傷慢性期の改善不可に関わる分子である可能性を探るとともに、網羅的解析により同定される分子をvimentinが制御しうるかについてなど分子間の関わりについても検討する。

次年度の研究費の使用計画

LC-MS/MS解析費用:500,000円、抗体:300,000円、実験動物費:400,000円、一般試薬:200,000円、チューブ類:200,000円

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] Synthesis of dihydrofuran-fused2012

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto K, Tamura K, Ohta N, Tohda C, et al
    • 雑誌名

      Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters

      巻: 22 ページ: 449-452

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Current and future therapeutic strategies2011

    • 著者名/発表者名
      Tohda C., Kuboyama T.
    • 雑誌名

      Pharmacology & Therapeutics

      巻: 132 ページ: 57-71

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Sominone improves memory impairments2011

    • 著者名/発表者名
      Joyashiki E., Matsuya Y., Tohda C.
    • 雑誌名

      Int. J. Neurosci.,

      巻: 121 ページ: 181-190

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Active components from Siberian ginseng2011

    • 著者名/発表者名
      Bai Y, Tohda C, Zhu S, Hattori M, Komatsu K.
    • 雑誌名

      J. Nat. Med.

      巻: 65 ページ: 417-423

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kamikihi-to (KKT) rescues axonal and synaptic2011

    • 著者名/発表者名
      Tohda C, Nakada R, Urano T, Okonogi A, Kuboyama T.
    • 雑誌名

      Int. J. Neurosci.

      巻: 121 ページ: 641-648

    • 査読あり
  • [学会発表] 量子化学的計算による人参薬効成分: Ginsenoside 類などの薬効機構の解明.2012

    • 著者名/発表者名
      梅嵜雅人、杉本佳奈子、春木孝之、伊藤泰地、武田湧、兼松佑典、東田千尋、北幸海、立川仁典
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012, 3, 28 - 31
  • [学会発表] 特別シンポジウム 薬学系女性の研究キャリア形成 ~アカデミア・企業・世界を舞台に2012

    • 著者名/発表者名
      東田千尋
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会(招待講演)
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2012, 3, 28 - 31
  • [学会発表] アルツハイマー病モデルマウスの記憶障害と軸索変性を改善する加味帰脾湯の作用2011

    • 著者名/発表者名
      中田理恵, 東田千尋
    • 学会等名
      第28回和漢医薬学会学術大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20110827-28
  • [学会発表] 「伝統医薬データベース」の構築2011

    • 著者名/発表者名
      柴原直利, 東田千尋, Zhu Shu, 櫻井宏明, 数馬恒平, 山本武, 小泉桂一, 紺野勝弘, 門脇真, 小松かつ子
    • 学会等名
      第28回和漢医薬学会学術大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20110827-28
  • [学会発表] 新規化合物1-deoxy-nor-sominone (Denosomin)2011

    • 著者名/発表者名
      勅使川原匡,久保山友晴,松谷裕二,東田千尋
    • 学会等名
      第54回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      加賀
    • 年月日
      2011, 9,26-28
  • [学会発表] 脊髄損傷の運動機能回復に関与するDenosominの軸索伸展作用.2011

    • 著者名/発表者名
      執行美智子,長田愛子,勅使川原匡,久保山友晴,松谷裕二,東田千尋
    • 学会等名
      第54回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      加賀
    • 年月日
      2011, 9,26-28
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸プロテオグリカンによる軸索再生阻害のシグナル伝達機構.2011

    • 著者名/発表者名
      久保山友晴,Jerry Silver,東田千尋, 上口裕之
    • 学会等名
      第54回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      加賀
    • 年月日
      2011, 9,26-28
  • [学会発表] アルツハイマー病モデルマウスの記憶障害と軸索変性に対する加味帰脾湯の改善作用.2011

    • 著者名/発表者名
      中田理恵、久保山友晴、東田千尋
    • 学会等名
      東田千尋会
    • 発表場所
      加賀
    • 年月日
      2011, 9,26-28
  • [学会発表] 神経化学の若手研究者育成セミナー 「神経変性疾患を知る・克服する 」2011

    • 著者名/発表者名
      東田千尋
    • 学会等名
      東田千尋
    • 発表場所
      加賀
    • 年月日
      2011, 9,26-28
  • [学会発表] Searching for natural medicines that improve2011

    • 著者名/発表者名
      Xiaohua Wang, Tomoharu Kuboyama, et al
    • 学会等名
      第28回和漢医薬学会学術大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2011, 8,27-28
  • [学会発表] Genetic, chemical and pharmacological2011

    • 著者名/発表者名
      Komatsu K, Zhu S, Tohda C:
    • 学会等名
      The 6th CCTNM-KSP-JSP Joint Symposium(招待講演)
    • 発表場所
      Shenyang, China
    • 年月日
      2011, 10,20-22

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公開日: 2013-07-10  

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