研究課題/領域番号 |
23500440
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
堀 修 金沢大学, 医学系, 教授 (60303947)
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キーワード | 神経細胞死 |
研究概要 |
1.PDモデルマウスを用いた検討。 野生型、及びATF6ノックアウトマウスを用いて、MPTP/プロベネシド慢性投与モデルを作製し、神経の変性及び凝集体形成について詳細な検討を行った。その結果、①特にアストロサイトの活性化が認められる時期(MPTP/プロベネシド投与開始後1-2週間の時点)にATF6ノックアウトマウスで強い神経変性が起こっていること、②同マウスで認められるユビキチン陽性の蛋白質凝集体にはalpha-synucleinはほとんど認められないものの、変性過程のドーパミン作動性神経に特に認められる事が明らかになった。これらのは、ATF6を欠損すると活性化アストロサイト由来の神経保護機構が低下し、神経変性が促進される、という我々の仮説を支持するものである。さらに、ATF6ノックアウトマウスでアストロサイトの活性化が起こりにくい原因として、IL-6やLIFなどの液性因子の発現低下が関与する可能性が示唆された。 2.UPR活性化物質タンゲレチン(IN19)によるドーパミン作動性神経の救済。我々がUPR経路を活性化する化合物として同定したタンゲレチンをマウスに経口投与すると、黒質-線条体系に存在する神経細胞及びアストロサイトにおけるUPRは活性化し、神経保護因子BDNFの産生量は増加した。この時、アストロサイトの活性化自身も軽度ながら有意に促進したことから、UPRの活性化はアストロサイトの活性化を介して黒質線条体系のドーパミン作動性神経の生存に重要な働きをしていること、更に新たな治療標的になる可能性が示唆された。 3.ATF6過剰発現用のアデノウイルス。野生型ATF6、或いはドミナントネガティブATF6を過剰発現するアデノウイルス作成に成功し、培養細胞を用いた実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.ATF6ノックアウトマウスの解析が予想以上に進行し、既に論文に掲載され高い評価を受けた(Hashida et al., PLoS One. 2012)。ATF6ノックアウトマウスにおいては、野生型マウスに比べてMPTP投与後の神経変性が促進するのみならず、神経傷害時に起こるべきアストロサイトの活性化が非常に弱いことが明らかになった。今後、ATF6がそれら液性因子の発現をどのように調節するかについて分子レベルで検討する予定である。 2.UPR活性化物質タンゲレチン(IN19)によるドーパミン作動性神経の救済も、順調に進展した。我々に結果は、UPRの活性化がアストロサイトの活性化を介して黒質線条体系のドーパミン作動性神経の生存に重要な働きをしていること、UPRが更に新たな治療標的になる可能性が示唆するものである。 3.ATF6過剰発現用のアデノウイルス作成についても順調に進展し、培養細胞を用いた実験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
1.ATF6によるアストロサイト活性化促進。 一般的に神経障害に伴い放出された液性因子がアストロサイトを活性化すると考えられている。ATF6がそれら液性因子の発現をどのように調節するかについて主に培養細胞系を用いて分子レベルで検討する。特に液性因子の放出にATF6が重要であるのか、或いは因子がアストロサイトに到達した後のシグナル伝達が重要であるのかを明らかにする。 2.MPTP投与モデルとは異なるPDモデルである変異型alpha-synuclein過剰発現マウスとATF6ノックアウトマウスの交配を行い、得られたマウスの表現型(神経変性、凝集体形成、アストロサイト活性化)について解析を行う。また、その他の新たなPDモデル動物の解析にも取り組む。 3.ATF6ノックアウトマウスで認められる蛋白質凝集体の構造解析 平成23年の検討を基に、ATF6ノックアウトマウスにおいて最も高率にUb陽性蛋白質凝集体が認められる条件を明らかにする。そして、該当条件で作製した脳切片、及び蛋白質抽出液(界面活性剤不溶分画)を用いて、小胞体蛋白質(GRP78, PDI, ORP150)、Ub、ビメンチンに対する特異的抗体による免疫染色、及びウエスタンブロットを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究を推進するため以下の研究費を請求する。 物品費として抗体、免疫染色用試薬、細胞培養関連器具等。旅費として国内学会参加。人件費として謝金分。
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