研究課題/領域番号 |
23500444
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
熊田 竜郎 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00402339)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 小脳顆粒細胞 / GABA / 細胞分裂 / 神経発生 |
研究概要 |
小脳顆粒細胞は中枢神経系で最も数の多い神経細胞であり、胎生期から生後にかけて長期間に渡り前駆細胞が分裂・分化して生じる。本研究は、小脳の葉形成期である生後初期の小脳外顆粒層の分裂における細胞外GABAの役割を明らかにすることを目的とする。昨年度は以下の1)細胞外GABAを放出する細胞の同定、2)ソニックヘッジホッグ(Shh)との関係について検討した。生後初期の小脳外顆粒層における細胞外GABAを放出するソースの同定 ラット小脳外顆粒層ではGABAニューロンがまだ存在しないにも関わらず、生後初期に一過性に細胞外GABA量の増加が認められる。これまでの予備研究からバーグマングリアがこの細胞外GABA量の増加に関与することを見いだした。グリア細胞によるGABAの産生を証明するために本年度は免疫組織法や二重in situ hybridization法などにより詳細な検討を行った。その結果、バーグマングリアが一過性にGAD65遺伝子を発現し、細胞外GABAのソースとなることを明らかにした。Sonic hedgehog( SHH) シグナリングとGABAA受容体シグナリングの関係の評価 Shhシグナリングは小脳顆粒前駆細胞の分裂に関わる重要なカスケードとして知られる。GABA受容体拮抗作用による小脳顆粒前駆細胞の分裂阻害におけるShhシグナリングの関与について検討した。Elvax投与法によるGABA受容体機能をin vivo で抑制したが、Gli-1やGli-2などのShhシグナルの下流分子の発現には影響が出なかった。GABAによる分裂制御はShh-Gliシグナルとは異なる可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、本研究課題申請時に1)GABAニューロンがまだ存在しない生後初期のラット小脳外顆粒層で細胞外GABA量の増加すること、2)この時期におけるGABA-GABAA受容体シグナリングは小脳外顆粒層外層における小脳顆粒前駆細胞の分裂に関与することを明らかにした。さらに驚くべき事に、この細胞外GABAのソースはグリア細胞である可能性が見えてきた。本研究課題では上記の新たな発見・知見を検証し、そのGABAによる細胞分裂制御のメカニズムと小脳の葉形成との関係を明らかにすることを狙いとする。 昨年度、まず申請者らは、研究実績の概要に示すように組織染色法を用いた詳細な検討により少なくともバーグマングリアがGABAを産生する酵素を発現し、GABAのソースとなることを明らかにすることができた。現在申請者らは、これまでに蓄積した知見をまとめ、論文投稿準備中である。 また、GABAの小脳顆粒前駆細胞の分裂に関与するメカニズムについては既知のShh-Gliシグナルとは異なる可能性を見いだした。しかしながら、この可能性を提唱するには、単一の手技で得られた結果だけでは不十分である。今後、細胞培養や遺伝子発現など様々なアプローチで検証していく必要がある。 一方、現行のイメージング機器の改良の遅れのため、GABAの時空間的な変化と小脳の葉形成の関係についての検討は今年度以降の課題として残った。この課題を検討するため、昨年度使用する予定であった予算を今年度に繰り越すことを決めた。 一部計画より遅れる課題もあるが、全体として計画は順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本課題申請時の予備実験に昨年度の研究成果により新たな知見が加わり、一連のまとまりのある重要な結果(1:GABAニューロンがまだ存在しない生後初期のラット小脳外顆粒層で細胞外GABA量の増加すること、2:この時期におけるGABA-GABAA受容体シグナリングは小脳外顆粒層外層における小脳顆粒前駆細胞の分裂に関与すること、3:細胞外GABAのソースはグリア細胞である、4:GABAの小脳顆粒前駆細胞の分裂に関与するメカニズムについては既知のShh-Gliシグナルとは異なる可能性がある)が得られた。そこで、本年度はまず不足しているデータの取得とより詳細な検証を加え、これらの新たな興味深い発見を学術論文にまとめ、発表できるようにすることに注力したい。その後、研究計画に記した研究の遂行を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策に記したように、これまでに得られた重要な結果(1:GABAニューロンがまだ存在しない生後初期のラット小脳外顆粒層で細胞外GABA量の増加すること、2:この時期におけるGABA-GABAA受容体シグナリングは小脳外顆粒層外層における小脳顆粒前駆細胞の分裂に関与すること、3:細胞外GABAのソースはグリア細胞である、4:GABAの小脳顆粒前駆細胞の分裂に関与するメカニズムについては既知のShh-Gliシグナルとは異なる可能性がある)について不足しているデータの取得とより詳細な検証を加え、学術論文にまとめる。投稿時に査読者に要求されうる追加実験を行う必要があると考えられる。また、下記の研究計画を遂行する予定である。 小脳前駆顆粒細胞の細胞分裂における興奮性GABAの役割の検討 細胞内塩素イオン濃度を調節するトランスポーターのin vitroおよびin vivo阻害実験により、小脳の葉形成時の細胞分裂過程における興奮性のGABA作用の役割の検討を行う。阻害効果が見られた場合にはカルシウムイメージング実験にて興奮性作用を評価しつつ、その機序の詳細について検討する。 細胞外GABA濃度の時空間的な変化と小脳の葉形成における細胞分裂との相関関係の評価 細胞外GABAイメージング法やカルシウムイメージング法により細胞外GABA濃度やGABAの脱分極作用と小脳の葉形成の時空間的な変化の相関関係について調査する。
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