研究概要 |
小脳に特徴的な十葉構造は胎生期後期から新生仔期にかけて形成する。この葉形成には小脳顆粒細胞の前駆細胞の分裂が関与する。この細胞の産生は小脳外顆粒層で長期間にわたり持続して行なわれているが、葉構造形成のためには生後直後に顕著な分裂が促進する必要があり、この機序に細胞外GABAが関わるという仮説を立てて、本研究課題で検証している。これまでに我々は豊橋科学技術大学と共同で小脳皮質より放出される細胞外GABA量の放出を可視化する技術を開発し、新生仔期に特異的に小脳外顆粒層に細胞外GABAが増え、小脳顆粒前駆細胞の分裂に寄与することを見出してきた。 平成26年度は本研究課題のメカニズムの詳細を検討するために、in vitro培養系とカルシウムイメージング法を用いた実験を中心に検討した。Sonic Hedgehogは小脳小脳顆粒前駆細胞の分裂に寄与することが広く知られる分子である。近年、このSonic Hedgehogが細胞内カルシウム変動に影響を与えることが報告されている(Belgacem YH & Borodinsky, 2011)ことから、細胞分裂を調節する共通経路の存在を仮定して研究した。検証する培養系の条件設定を行いながらカルシウムイメージングを行ってきたが、これまでのところ、Sonic Hedgehogを投与しても著しい細胞内カルシウムイオン濃度の変化自体は認められていない。しかし、GABAA受容体・Sonic Hedgehog共にカルシウム変動のリズムに影響を及ぼすことが報告されていることから、より長期にわたる培養・観察が重要である事が考えられる。現在、より長期的な培養かつ観察できる系を確立しつつあり、詳細を検討する予定である。
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