研究課題/領域番号 |
23500445
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
西村 正樹 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 准教授 (40322739)
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研究分担者 |
松尾 明典 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 助教 (20324585)
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キーワード | 神経疾患 / アルツハイマー病 / βアミロイド / トランスジェニック・マウス / 認知症 |
研究概要 |
アルツハイマー病の分子病態において、決定的な役割を果たすのはアミロイドβ(Aβ)ペプチドである。Aβの産生を制御する治療ストラテジーとして、本課題ではAβ産生の直前の前駆体であるAPP-C99をターゲットとするアプローチの開拓を目的とする。独自に同定しているタンパク質ACDPは、Aβ分泌の抑制する、γセクレターゼ複合体と結合する、γセクレターゼ活性を阻害しない、APP-C99の分解を促進するなどの特徴を示す。本課題では、ACDPの作用メカニズムの解析およびACDPトランスジェニック・マウスを用いた解析を通し、副作用のない治療法の実現を目指した研究を進める。 本年度の実績のうち、ACDPの発現メカニズムについては、(i)ACDPは脳においてTGF-βに発現誘導されること、(ii)ACDPはTGF-βによるAβ産生抑制活性を仲介する可能性が示唆された。また、ACDPのマウス脳での発現は広くニューロンに認められ、トランスGolgiネットワークおよびエンドゾームというAβ産生部位に一致して局在することが明らかとなった。さらに、ACDP-Tgとアルツハイマー病モデルAPP-Tgマウスとの掛け合わせを進め、ACDP/APP-double Tgマウスの解析を始めた。これにより、APP-Tgマウスに比べ、Aβ沈着は有意に減少していることが明らかとなってきた。 以上の結果は、ACDPが正常脳においてもAβ産生制御にはたらいている可能性を強く示唆するものであり、今後、治療法開発に役立てるための重要な知見になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ほぼ計画通り以下を進めた。 1. ACDP発現調節メカニズムに関する検討:ACDPは翻訳段階においてTGF-β刺激により発現誘導を受けることが報告された。一方、TGF-β受容体活性化はAβ産生を抑制すると報告されており、ACDPはこれを仲介する可能性がある。これについて、ラット脳スライス培養系を用いて検討した。TGF-β刺激は大脳皮質組織におけるACDP発現を誘導し、Aβ産生を抑制したが、ACDPノックダウン処理後では、このAβ産生抑制効果が認められなかった。この結果から、ACDPはTGF-βによるAβ産生抑制活性を仲介することが判明した。 2. ACDPの脳内発現に関する検討:免疫組織化学により、ACDPは広範囲のニューロンにおいて発現が認められた一方、グリア細胞には発現がみられなかった。細胞内局在としては、トランスGolgiネットワークおよびエンドゾーム系に陽性所見がみられた。 3. ACDP-TgとAPP-Tgマウスの掛け合わせ実験:ACDP/APP-double Tgマウスの解析を始めた。APP-Tgマウスに比べ、Aβ沈着は有意に減少していることが明らかとなってきた。さらに、認知記憶機能に関わる行動実験を進めている。 以上、ほぼ年度計画の通りに解析を進めることが出来た。免疫組織化学による発現確認は、追加として遂行 した。
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今後の研究の推進方策 |
【平成25年度計画】 ACDP-TgとAPP-Tgマウスの掛け合わせによる本症の病理所見や記憶学習障害へのACDP過剰発現の効果の検討を継続する。また、薬剤開発に向けたリード化合物検索として、ACDP様活性を示す化合物を細胞内APP-CTFレベルと分泌Aβレベルの変化を指標にスクリーニングする。ヒット化合物については生理活性・毒性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
トランスジェニック・マウスの飼育費、マウスの購入費、および免疫組織化学的解析、生化学的解析のための試薬、プラスティック器具、抗体、学内共同機器使用料などが主な使途となる。また、成果発表のための学会参加に関わる旅費および参加費としての使用を計画している。
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