研究課題
アルツハイマー病の分子病態は、アミロイドβ(Aβ)ペプチドの脳内蓄積である。Aβの産生を制御する治療ストラテジーとして、本課題ではAβ産生の直前の前駆体であるAPP-C99をターゲットとするアプローチの開拓を目的とした。申請者らはAβの前駆体APP-C99に作用する新たな分子ACDPを同定している。ACDPは、Aβ産生を抑制する、γセクレターゼ複合体と結合するがその活性を阻害しない、APP-C99の分解を促進するなどの特徴を示す。本課題では、ACDPが本症の治療ターゲットとして有望であることを検討するべく研究を進めた。平成25年度成果:ACDP-Tgとアルツハイマー病モデルAPP-Tgマウスの掛け合わせ実験から、ACDP/APP-double Tgマウスでは、APP-Tgマウスに比べ、脳内Aβ沈着が有意に減少していることや短期記憶の障害が有意に改善していることが明らかとなった。一方、ACDP様活性を示す低分子化合物のスクリーニングでは、未だヒット化合物は得られていない。本研究課題を通しての成果:ACDPは分泌タンパク質であるが、細胞外からγセクレターゼ複合体に結合し、そのシャペロン機能を妨害する。ACDPはヒト及びマウス脳において広くニューロンに発現が認められ、細胞内局在はAβ産生部位に一致することが明らかとなった。その発現メカニズムについては、TGF-βに転写誘導されることが示唆された。アルツハイマー病症例の剖検脳ではACDP発現レベルが有意に低下していたのに対し、ACDPを高レベルで発現するマウスとアルツハイマー病モデルマウスとの掛け合わせ実験により、ACDPが脳内Aβ沈着を減少させ短期記憶障害を有意に改善させることが明らかとなった。以上の結果は、ACDPが本症の治療法開発における有効なターゲット分子であることを示唆しており、今後治療法開発を進めることが有望と考えられた。
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Nature Communications
巻: 未定 ページ: 印刷中
10.1038/ncomms4917
Cellular and Molecular Life Sciences
10.1007/s00018-013-1515-x
http://ben.shiga-med.ac.jp/~hqmnran/index_1.html