研究課題/領域番号 |
23500448
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲垣 忍 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90151571)
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研究分担者 |
松山 知弘 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10219529)
古山 逹雄 香川県立保健医療大学, 教養部, 教授 (20238702)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脳の発達 / 大脳皮質 / オリゴデンドログリアの分化成熟 / 髄鞘形成 / 細胞死 / セマフォリン / 脳虚血 / 脳の修復 |
研究概要 |
オリゴデンドロサイト(OL)は生後の脳でも新生され、神経機能の成熟や修復、維持に重要な役割を担っていると考えられる。これまでの私達の研究からSema4Dが髄鞘形成抑制分子であることが強く示唆されたので、本研究ではSema4Dの髄鞘形成細胞の分化に及ぼす影響と脳虚血損傷後の組織修復への関与を検証し、その分子機構を解析する。平成23年度は1)生後発達期マウスを用いてSema4D欠失による髄鞘形成細胞であるOLの増殖、分化、細胞死、髄鞘形成に及ぼす影響を検討した。 a. 各マーカー抗体を用いて、生後10日、14日、28日齢のSema4D欠失マウスの大脳皮質におけるOL前駆細胞(OPC)とOPCから分化したOLの密度を調べた。その結果、いずれの時期のSema4D欠失の大脳皮質でもOPCの密度は変わらないが、生後14日と28日後ではOLの密度が上昇していた。一方、神経細胞の密度には変化が無かった。以上の結果はSemaD欠失によりOPCからOLへの分化が亢進したことを示唆する。 b. 生後10日、14日齢のSema4D欠失マウスの大脳皮質におけるOPCの増殖能には変化が見られなかったが、OLの細胞死は生後14日齢で減少していた。このことから、Sema4D欠失が、分化後のOLの細胞死を抑制する結果、OL密度が増加したと考えられた。2)Sema4D欠失型マウス由来のOL培養系を用いてSema4D欠失およびSema4D添加の影響を調べた。いずれもOPCの増殖には影響が無かったが、Sema4D添加はOL分化を抑制し、OLの細胞死を亢進した。これらの結果は、上記1の大脳皮質におけるSema4D欠失の結果と一致し、Sema4Dが細胞死を亢進することでOL分化を抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(生後発達期における大脳皮質ならびにOLの一次培養系を用いて、OL髄鞘形成細胞の分化制御に対するSema4Dの役割にかかわる解析はおおむね予定通り進展した。電顕による髄鞘形成の解析、Sema4D作用の受容体の検討、ならびに脳梗塞傷害後の組織修復に及ぼすSema4D作用の解析は遂行したが結論を出すには至らず、平成24年度以降も解析を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画に大きな変更は無く、おおむね当初の予定通り計画を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更は無く、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 上述したように平成24年以降は、1) 電顕による髄鞘形成の解析と2) Sema4D作用の受容体の解析を継続し、3) 脳梗塞傷害後、急性期のみならず1ヶ月の慢性期における組織修復に及ぼすSema4D作用の解析、を遂行する。さらに、4)Sema4D作用の受容体がPlexinB1であるならば、その細胞内シグナルであるRhoやR-Ras細胞内分子機構を解析する。PexinB1欠失でSema4D作用が無くならない場合にはOLに発現する候補受容体や別のファミリー受容体であるPlexinB2やPlexinB3とのリガンドの結合やシグナル系を解析する。5)Sema4D作用を阻害する目的でSema4D中和抗体投与が脳梗塞後の修復に寄与するか検証する。
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