研究概要 |
メラニン凝集ホルモン受容体MCHR1はG蛋白質結合型受容体に属し、「摂食」「うつ不安」の両方に関与する極めて興味深い分子であり、重要な創薬標的でもある。昨年度は『MCHが結合した受容体がどのような構造変化をおこし、その結果、どのような分子メカニズムでG蛋白質を選択して活性化するか』という構造ダイナミクス、さらに膜特殊構造への局在機構の一端を明らかにした。(1)MCHR1は通常Gq とGi/oに共役する。しかし我々が見出した機能獲得変異体F318KはGq選択的に活性化することを見出した。さらに活性型ロドプシンを鋳型とすることで3次元モデルを作成し、K318と水素結合する部位は細胞内第一ループD79, W73であることを示した。さらにF318KにおいてGqとの共役能が強化する事実は「GqのC末端にあるN357とMCHR1のK318-W73-D79が相互作用する」ことで解釈が可能であることを示した。(2)ラットMCHR1はGq, Gi/oと共役するが、キンギョMCHR1はGqとのみ共役する。そこで両者のアミノ酸配列を比較して20種類の変異体を作成し、機能アッセイを行うことにより、Gi/o結合に関与する部位をかなり狭めることができた。(3)Xenopus tropicalisから4種類のMCH受容体1a, 1b, 2a, 2bのクローニングを行った。さらにそれぞれの局在を調べ、哺乳類培養細胞に発現させることにより、それぞれのG蛋白質共役性を決定した。(4)MCHR1は神経細胞1次繊毛に局在する。1次繊毛という場におけるMCHR1の機能を調べ、その特異なセンシング機構の本体について追求するために、1次繊毛含有するヒト網膜由来不死化細胞RPE1を入手し、MCHR1が「選択的」に1次繊毛に発現するために必要なアミノ酸残基(細胞内第3ループ)を特定することに成功した。
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