研究課題
・LOTの形成における表現型解析:胎生18日目のマウス胎仔の嗅球に蛍光色素DiIを注入し、LOTを可視化して神経束形成の後に起こる軸索側枝形成において解析したところ、LOTUS-KOマウスでは軸索側枝が有意に増加したのに対し、NgR1-KOマ ウスでは逆に有意に減少した。これはLOTUSのNgR1に対する拮抗作用が消失することで軸索側枝の増加が見られたことから、Nogo-NgR1の作用によ って軸索側枝か形成が促進されると考えられた。それを更に検証するため、ダブルーKOマウスで解析した結果、軸索側枝はNgR1-KOマウ スのレベルまで減少することが示され、仮説を支持した。・海馬における解析:組織学的解析によって、LOTUS-KOマウスでは歯状回内部の錐体細胞の移動細胞が有意に多く存在していることが判明した。これは、野生型に比してLOTUS-KOマウスでは細胞移動が遅滞していることを示唆するため、NgR1-KOマウスおよびダブル-KOマウスで同様の解析を進め、LOTUSのNogo-NgR1相互作用に拮抗作用が細胞移動に関与することを検証する。・脊髄損傷モデルマウス:LOTUS-KOマウスを用い、脊髄損傷モデル動物を作製して野生型マウスと比較検討した。胸椎7-8位で背側反側切断を行って下肢の歩行麻痺状態を作製し、BBBスコアリングによる歩行状態を経時的に解析したところ、野生型マウスが示す自然回復能(自然再生能)がLOTUS-KOマウスでは著しく障害されていた。このことは、げっ歯類が有する自然再生能にLOTUSが大きく貢献していることを示唆する。・LOTUS過剰発現(LOTUS-TG)マウスの作製:軸索末端に局在するSynapsin-1をプロモータとして軸索に特異的に過剰発現するLOTUS-TGマウスを作製した。現在、解析に用いるためのコロニー形成を実施している。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記述した内容の内、平成24年度に計画した内容の約80%は達成した。それに加え、PirBとLOTUSの結合によって網膜神経節細胞の軸索伸長が促進されると予想したが、LOTUSとPirBの結合はPirBが受容体として受容する神経突起伸長阻害因子との相互作用に対して拮抗作用を示すことが判明した。その検証研究を当該年度中に進めた。当初の計画達成度80%とこれらの予定外の研究進展を合わせて、おおむね順調に進展していると判断した。
1) LOTUS-KOマウスを用い、海馬や大脳皮質の神経回路形成における異同を更に詳しく解析する。海馬歯状回錐体細胞の層構築に異常が見らたので、この表現型が生じる経緯を種々の免疫組織化学的解析を行う。2) 網膜神経節細胞の神経突起伸長に関与するLOTUS相互作用分子を同定する。そのために、網膜神経節細胞のcDNA発現ライブラリを作製し、LOTUSと結合する分子を探索する。3) LOTUS-TGマウスにおいて脊髄損傷モデルを作製し、損傷後の運動回復過程を野性型およびLOTUS-KOマウスと比較検討する。
1) LOTUS-KOマウスを用いて異常表現型が生じる経緯を種々の免疫組織化学的解析を行うため、動物維持費や組織化学用の試薬費などの消耗品費に充てる。2) 網膜神経節細胞の神経突起伸長に関与するLOTUS相互作用分子を同定するため、網膜神経節細胞のcDNA発現ライブラリ作製費や分子生物学用試薬費などに充てる。3) LOTUS-TGマウスにおいて脊髄損傷モデルを作製費として充てる。当初予定していたLOTUS-TGマウスにおける脊髄損傷実験の予定がH25年度に繰り越されたため、動物維持費や動物モデル作製費などをH24年度の繰り越し金として残し、繰越金はそれらを経費としてH25年度の消耗品費と合算の上で一括して使用する予定である。4)日本神経科学・化学合同大会(Neuro2013)(京都)での発表のための旅費に充てる。
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Annual Review 2013 神経
巻: - ページ: 63-67
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