研究課題/領域番号 |
23500453
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大多 茂樹 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (20365406)
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研究分担者 |
深谷 雷太 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60348670)
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / グリオーマ / 再生医療 / 癌幹細胞 |
研究概要 |
研究当初、マウス神経幹細胞におけるchd7の発現を独自に見いだしていたが、さらに、ヒト神経幹細胞においてもCHD7の発現が確認できた。また、欧米人由来グリオーマ幹細胞においてCHD7がヒト神経幹細胞より有意に高発現していることが検証された。このことは、グリオーマ幹細胞におけるCHD7の機能解析の重要性を示唆している。現在、グリオーマ幹細胞におけるCHD7の発現制御機構を解明するために、CHD7プロモーターのメチル化の状態を解析中である。さらに、公開されている遺伝子発現データベース解析によって、CHD4,CHD7,CHD9がCHDファミリーの中でも、グリオーマ検体において高発現していることが明らかとなった。このことは、クロマチンモデリング因子であるCHDファミリーの一部のサブセットがグリオーマで高発現していることを示し、その生物学的な意義の解明は重要であると考えられる。我々は、CHD7の遺伝子発現を抑制できるshRNAレンチウィルスの系を構築し、培養グリーマ細胞の中では比較的CHD7を高発現しているU251細胞において、その遺伝子発現を抑制させて細胞増殖能に与える効果を検証した。その結果、CHD7の発現抑制により、細胞増殖抑制がおきることを確認した。この結果は、グリオーマにおけるCHD7の機能を解明する手掛かりになるものと考えている。さらに、グリーマ幹細胞においても同様な実験を準備中である。現在、chd7変異マウスの個体化を図るとともに、chd7ジーントラップES細胞を用いて、神経幹細胞におけるchd7の機能解析を実施しようとしている。さらに、CHD7を発現させるアデノウィルスの系も準備中であり、これらの研究材料を駆使することにより、より精緻なCHD7の機能解明が神経幹細胞やグリーマ幹細胞で実現できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスchd7の神経幹細胞における機能をin vivoに於いて詳細に解明するために、chd7変異マウス(whi)の個体化を進めている。同時にchd7ジーントラップES細胞を研究材料として導入中である。また、ヒト神経幹細胞、グリオーマ細胞や、グリオーマ幹細胞でのCHD7遺伝子発現抑制に伴う、機能変化を明らかにするために、shRNAレンチウィルスベクターの系も確立した。さらに、アデノウィルス等による、過剰発現系も構築中であり、これらのツールと実験材料を組み合わせ、in vitroおよびin vivoにおけるchd7の機能解析が進行中であり、申請計画にそって研究が展開されていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
chd7変異マウス(whi)の個体化したのち、その胎児脳を用いて、各種神経前駆細胞マーカーの発現パターンを解析するともに、神経幹細胞をニューロスフェアとして培養することにより、神経幹細胞維持に対するchd7の貢献度を明らかにする。さらに、成体chd7変異マウス(whi)において、前脳および海馬といった神経幹細胞局在部位における神経前駆細胞の発現様式の変化を解析することにより、成体脳におけるchd7の機能も解明する予定である。また、chd7ジーントラップES細胞をin vitroで神経幹細胞に誘導したうえで、野生型ES細胞と比較することにより、神経幹細胞およびその分化能に対して、chd7がどのような役割を果たしているのかを解明する。一方で、chd7ジーントラップES細胞を個体化し、先に示したchd7変異マウス(whi)での解析同様に、chd7の神経幹細胞における機能解析を実施する予定である。また、これらの解析とは別にヒト神経幹細胞やCHD7を高発現しているグリオーマ幹細胞を用いて、CHD7が果たす役割を細胞増殖や、幹細胞性維持の観点から解析するとともに、それらがどのような分子機構を介しているかを、分子生物学的手法を駆使して解明することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
継続して、chd7変異マウス(whi)の個体化をはかるともに、chd7ジーントラップES細胞のマウス個体化を行う予定である。これら変異マウス個体化に必要な試薬を購入するとともに、変異マウスの系統維持に必要な費用が発生する予定である。また、これら変異マウスに於ける神経前駆細胞の発現様式を組織免疫染色により解析するために、必要な抗体を購入するとともに、神経幹細胞初代培養に必要な試薬を購入する。変異マウスの表現系の解析のためには、必要に応じてジーンチップを購入して解析に供する。さらに、ヒト神経幹細胞や、グリオーマ幹細胞を培養するために必要な試薬を購入するとともに、それらにおけるCHD7の機能解析を、分子生物学的な手法で行うための試薬を購入する。これらに加えて、幹細胞におけるエピジェネティカルな制御による種々の機能調節に関する知見を得るために、必要に応じで国内外の学会に参加する予定である。
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