研究課題/領域番号 |
23500453
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大多 茂樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20365406)
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研究分担者 |
深谷 雷太 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60348670)
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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キーワード | 神経幹細胞 |
研究概要 |
RIKENから譲渡を受けたマウスChd7ジーントラップES細胞を神経幹細胞に分化させる系を新たにたちあげ、それらに各種神経細胞(ニューロン・グリア)への分化能があることを確認した。また、その分化能やニューロスフェア形成能が親株である野生型ES細胞由来神経幹細胞とどのように異なるのかを明らかにすべく解析を開始した。同時に、Chd7ジーントラップES細胞のマウスへの個体化を数回試みたが、キメラマウスを得ることはできなかった。その原因に関しては、ES細胞の品質に問題がある可能性が考えられた。グリオーマ幹細胞において、CHDファミリーの中でもCHD7遺伝子の高発現をすでに見出してきたが、グリオーマ幹細胞でのCHD7の機能解析を行うために、パリデカルト大学(Chneiweiss博士)よりグリオーマ幹細胞を入手し、スフェアー体で継体培養可能であることを検証した。今後、これらのグリオーマ幹細胞を用いて、CHD7の機能解析を行う予定である。また、Chd7の神経幹細胞における機能の分子的基盤を検証するために、Chd7プロモーターのシスエレメントを検索し、Pax6に着目した。マウス神経幹細胞においてPax6をレトロウィルスで過剰発現させることにより、Chd7の蛋白発現が亢進することが明らかとなった。そこで、Pax6を基軸としてChd7の機能をエピジェネティックな機構による制御を考慮して、神経幹細胞において解明する予定である。また、Chd7点変異マウスであるChd7/Whiマウスの個体化に成功し、そのコロニーを拡大するとともに、それら変異マウスの胎児脳での解析を免疫組織化学的手法を用いて開始した。さらに、マウス子宮内胎児エレクトロポレーション法により、Chd7の発現をマウス胎児脳でノックダウンさせる系も新たに導入し、現在その表現系を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Chd7ジーントラップES細胞を個体化すべく注力したが、キメラマウスを得ることができなかった。その原因として、RIKENから提供されたES細胞の性質に問題がある可能性があるため、現在調査中である。一方で、Chd7ジーントラップES細胞からニューロスフェアを作製することができたため、その分化能等に関して解析を進めている。また、Chd7点変異マウスChd7/Whiに関しては順調にマウスコロニーを増やすことができたため、現在それらの変異マウス胎児脳を回収し、免疫組織化学的手法により解析中である。さらに、マウス胎児脳由来神経幹細胞において、Pax6を過剰発現することにより、Chd7の蛋白発現が亢進することを新たに見出した。Pax6がマウス胎児脳の神経幹細胞において重要な機能を有していることは良く知られているが、Chd7プロモーター上にPax6結合部位があることから、Sox2のみならずPax6を基軸とした神経幹細胞におけるChd7の新しい機能制御が解明される可能性がある。これらの進捗状況を踏まえて、当初の研究目標に向かって研究が進捗していると判断している。とくに、最終年度はChd7/Whiマウスにおける解析が進展することが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
Chd7ジーントラップES細胞から誘導した、神経幹細胞のin vitroでの性状解析を継続して行う。具体的には細胞増殖能・自己複製能・神経分化能を詳細に検証する。同様にグリオーマ幹細胞やヒト神経幹細胞において、レンチウィルスで発現させたshRNACHD7を用い遺伝子発現抑制させた系により、同様な解析を行う。マウス神経幹細胞の系において、Pax6過剰発現により、Chd7の発現が亢進することを新たに見出したが、エピジェネティックな制御によるChd7の機能制御を、幾つかのエピジェネティック関連分子に着目して行う。現在、繁殖中のChd7/whi変異マウスの胎児脳の免疫組織化学解析により、神経幹・前駆細胞の性状の変化を解析することにより、Chd7のin vivoにおける機能解析を行う。それら解析で得た結果をさらに検証するために、子宮内胎児エレクトロポレーション法を用いて解析する。これらの実験材料や方法を駆使し、神経系幹細胞やグリオーマ幹細胞におけるin vitroおよびin vivoでのChd7の機能解析を行い、クロマチンリモデリング因子の、それら幹細胞での生理学的意義を明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
Chd7ジーントラップES細胞から誘導した神経幹細胞のin vitroでの性状解析に注力する。そのために必要なES細胞培養培地や神経幹細胞への選択的分化培地および各種添加試薬を購入する。また、ヒトおよびマウス神経幹細胞培養培地を購入する。グリオーマ幹細胞におけるChd7の機能を明らかとするために、グリオーマ幹細胞培養培地や、その分子生物学的な解析に必要な試薬を購入する。さらに、Chd7/whi点変異マウスの解析を行うために、マウス飼育費を増額して支出するとともに、変異マウスにおける神経幹細胞・神経細胞の性状解析を行うために、各種抗体を含む免疫組織化学的解析に必要な試薬や、分子生物および生化学的解析に必要な各種試薬を購入する予定である。24年度未使用額の発生は、当初予定したChd7ジーントラップES細胞のマウス個体化に伴うマウスコロニーの維持費が不要となったためであり、25年度に行う予定の研究計画においてChd7/whi点変異マウスコロニーを拡大し、研究を実施する。
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