クロマチンリモデリング因子CHD7がマウス神経幹細胞に発現し、既に神経幹細胞増殖因子として報告したMIF(Macrophage migration inhibitory factor)により発現制御を受けることを新たに明らかにした。さらに同じく神経幹細胞に発現するPAX6によってもCHD7が発現制御を受けうることが明らかとなった。レンチウィルスによるCHD7遺伝子発現抑制により、これらのシグナルカスケードの下流にはHes5やN-Mycが存在していることが判明した。これらに加えて、CHD7がマウス神経幹細胞の細胞増殖や幹細胞性維持に貢献していることが示されたが、過剰発現系によりヒトES細胞由来神経幹細胞の細胞増殖制御にもCHD7が貢献しうることが明らかとなった。また、CHD7変異マウス胎児脳を解析したところTbr2/Ki67共陽性細胞(Intermediate Progenitor Cells)の減少を見出した。このことは、神経発生初期において、ニューロン新生にCHD7が貢献しうることを示している。事実、in vitroでマウス神経幹細胞においてCHD7の発現を抑制した際には、分化細胞におけるニューロンマーカーの減少を認めた。一方で、ヒトグリオーマではCHD7高発現患者群の予後が低発現群より悪いことが明らかになっているが、新たにグリオーマ幹細胞におけるCHD7の高発現を見出し、神経幹細胞同様にCHD7がグリオーマ幹細胞の細胞増殖に寄与していることを見出した。これらのことにより、難治性であるグリオーマの分子標的としてのCHD7の意義が明らかとなった。
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