研究課題/領域番号 |
23500458
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安東 英明 独立行政法人理化学研究所, 発生神経生物研究チーム, 研究員 (50373262)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | miRNA / カルシウム / IP3受容体 |
研究概要 |
タンパク質をコードしない小さなRNA分子であるmicroRNA (miRNA) は、脳神経系の発生・分化の制御に重要な役割を果たす。一方、細胞内カルシウムチャネルIP3受容体1型の部位特異的欠損マウスは、神経細胞の発達異常、樹状突起スパインの増加といった表現型を示す。これらの表現型にmiRNAが関与している可能性を調べるため、IP3受容体1型欠損マウスで発現が低下しているmiRNAや、神経細胞でカルシウム濃度上昇によって発現誘導されるmiRNAをマイクロアレイを用いてスクリーニングし、いくつかの興味深いmiRNAを同定した。これらのmiRNAは、カルシウムシグナルの下流で、神経細胞の成熟、スパイン形成、シナプス形成などを制御している可能性が推測される。 本年度は、これらのmiRNAのマウス脳における発現解析を行った。まず、野生型マウスおよびIP3受容体1型の小脳中脳特異的欠損マウスの脳切片を用いて、miRNAに対するLNAプローブを利用したin situハイブリダイゼーションの系を構築した。この系で、上記スクリーニングで同定された数種類のmiRNAの発現を解析したところ、脳神経系特異的なmiRNAの小脳プルキンエ細胞での発現が、野生型マウスに比べIP3受容体1型欠損マウスにおいて低下していることを見いだした。このmiRNAに関するこれまでの報告と考え合わせると、このmiRNAは、IP3受容体1型からのカルシウム放出によって発現誘導されている可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
miRNAのマウス脳における in situハイブリダイゼーションの系を確立した。これにより、スクリーニングにより同定されたmiRNAのマウスの脳での発現部位、発現細胞を解析することが可能になった。さらに野生型マウスとIP3受容体1型欠損マウスとの比較も行い、あるmiRNAの小脳プルキンエ細胞での発現が欠損マウスで低下していることを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
大脳皮質など、他の部位特異的IP3受容体1型欠損マウスの脳切片を用いたin situハイブリダイゼーションを行う。また初代培養神経細胞を用いて、刺激によるmiRNAの発現変動や、IP3受容体を阻害することによる発現への影響を解析する。さらに、miRNAの過剰発現や発現抑制により、神経細胞の成熟やシナプス形成に及ぼす影響を解析する。 また、miRNA活性を生細胞で可視化する技術の開発や、光照射によりmiRNAを活性化する技術の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬消耗品(遺伝子導入試薬、細胞培養試薬、LNAプローブ、分子生物学用試薬、抗体、実験動物、プラスチック製品、など):約110万円学会参加費:約5万円その他:約5万円
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