研究課題
マイクロRNA (miRNA)は、タンパク質をコードしない約20-25塩基の小さなRNAであり、標的遺伝子のmRNAに相補的に結合してタンパク質翻訳を抑制する。miRNAは、脳機能発現に重要な役割を果たしており、神経分化、神経細胞の樹状突起の発達・成熟、スパイン形成、シナプス形成などを制御している。miRNAの機能解析のために新しい実験方法の創出が必要であり、本年度は主に以下の2つの新規実験手法の開発を行った。1、光により活性化されるmiRNAの開発従来のmiRNAの機能解析方法では、細胞内で局所的に任意のタイミングでmiRNAを活性化することはできない。光分解性の保護基(ケージ化試薬)をmiRNAに付加することにより、miRNA活性を時間的・空間的にコントロールすることが可能になると考えられる。本年度は、神経特異的miRNAの合成2本鎖RNAに、ケージ化試薬を反応させることにより、ケージドmiRNAの合成を行った。培養細胞を用いてケージドmiRNAの活性を評価したところ、ケージ化によりmiRNAの活性が部分的に抑制された。さらに光照射によりわずかながら活性が回復していることを見いだした。さらなるケージ化効率、光による活性化効率の改良が必要である。2、生細胞のmiRNA活性を経時的に測定する技術の開発これまで生きた細胞内のmiRNA活性をリアルタイムでイメージングする技術はなかった。本年度は、生細胞内でのmiRNA活性をリアルタイムで測定するための蛍光指示薬の開発を行った。この指示薬を用いて、培養細胞で過剰発現されたmiRNA活性の経時的変化の測定に成功した。また、マウスES細胞を神経系へ分化誘導し、内在性miRNA活性の経時的変化の測定も行った。この方法により、従来解析が難しかったin vivoでのmiRNA活性の時空間的変化の解析が可能になることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
脳神経系の発生分化・発達を制御するmiRNAの機能を従来とは異なる手法で解析するため、新規実験方法の開発を行った。光により活性化されるmiRNAの開発に関しては、miRNAにケージ化試薬を共有結合させ、精製する方法を確立した。培養細胞を用いた実験で、部分的ながら光によるmiRNAの活性化を確認している。一方、生細胞のmiRNA活性を経時的に測定する技術の開発に関しては、生細胞内でのmiRNA活性をリアルタイムで測定するための蛍光指示薬の開発を行った。この蛍光指示薬を用いてHeLa細胞やES細胞でのmiRNA活性のタイムラプスイメージングに成功しており、in vivoでのmiRNA活性の時空間的変化の解明できることが期待される。
光により活性化されるmiRNAの開発に関しては、miRNAとケージ化試薬との反応条件や精製方法の改良、細胞内への導入方法の検討、光照射方法の検討、miRNA活性評価方法の検討などを行う。生細胞のmiRNA活性を経時的に測定する技術の開発に関しては、ES細胞のmiRNA活性のイメージング、線虫のmiRNA活性の時空間的変化の測定、miRNAプロッセッシングのkineticsの解析などを行う。
該当なし
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Gastroenterology
巻: S0016-5085(13) ページ: in press
10.1053/j.gastro.2013.03.047