研究課題
我々の体の動きは中枢神経系の神経回路間の密接な相互作用によって生み出されている。しかし回路同士の相互作用やワイヤリング機構の詳細は未だに明らかではない。本研究では神経結合パターン形成異常による歩行運動の異常を示す遺伝子改変マウスを用いた新 たな運動制御の実験モデルを駆使して、(1)運動出力を担う脊髄神経回路が大脳皮質運動野をはじめとする上位中枢によってどのように制御されているのか、(2)誕生から成熟するまでの間にどのような過程でこれらの神経回路同士のワイヤリングが起きるのかを、 マウス個体において神経回路レベルで明らかにすることを目的とした。これまでに軸索誘導因子キメリンを全身性に欠損したマウス(全身性キメリンKOマウス)が、皮質脊髄路および脊髄介在ニューロンの脊髄内における左右の軸索投射異常が野生型でみられる左右交代性の歩容とは異なり、左右が同期したウサギ様跳躍歩行を示すことを示している。本研究では、まず大脳皮質特異的キメリンKOマウスを作成し、皮質脊髄路の軸索投射異常の歩行について調べた。この結果、新生児期においても、成熟動物でも歩行運動の際の左右肢パターンは野生型マウスと同様に左右交代であった。このことは、皮質脊髄路の軸索混線は歩行運動パターンにはほとんど寄与していないことを示唆している。次に脊髄の興奮性ニューロンの一部が誤って反対側に投射するという異常が見られるVGLUT2陽性細胞特異的キメリン欠損マウスを作製し、成熟動物でその歩行パターンを解析したところ、左右肢が同期したパターンと交代した歩行パターンの両方を示した。また、新生児マウスの脊髄摘出標本においても同様の運動出力パターンが観察された。これらの結果から、上位中枢の関与よりも、脊髄の興奮性ニューロンのワイヤリングが重要であることが明らかになった。
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Journal of Neuroscience
巻: 34 ページ: 3841-3853
Genes to Cells
巻: 18 ページ: 873-885
10.1111/gtc.12081