研究課題/領域番号 |
23500461
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
安田 浩樹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60294071)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PKN / メタ可塑性 / 代謝型グルタミン酸受容体 / ストレス / 海馬歯状回 / 顆粒細胞 |
研究概要 |
私たちはタンパク質キナーゼPKNノックアウトマウス海馬において幼若期に、同じ異シナプス性長期抑圧がシナプス後性に生じることを見いだした。1、この長期抑圧はNMDA受容体、および5型代謝型グルタミン酸受容体依存性である、2、PKNはシナプス後部で作用しており、亢進した長期抑圧はシナプス後性の発現を示し、エンドサイトーシスが関与している、3、KOマウスにおいては、長期抑圧が亢進している生後0-2週の間は、野生型マウスに比べてシナプス伝達が未発達で、サイレントシナプスが多い。またPKN KOマウスでは長期抑圧誘発刺激によってサイレントシナプスがより多く発現する。以上が明らかになった。幼若海馬においてはPKNがシナプス長期抑圧を抑制することによって、シナプス発達を制御していることがわかった。 また研究代表者は、うつ状態の原因の一つ、ストレスが海馬歯状回顆粒細胞に与える影響を研究している。数日間の強制水泳により顆粒細胞が、活動電位が発生しやすい状態になることを見いだした。膜の興奮性制御には様々なイオンチャネルが関与しているが、特に電位依存性、あるいはカルシウム依存性カリウムチャネルがこの現象に関与しているか、現在検討中である。また、上記の蛋白キナーゼPKNについて、神戸大学バイオシグナルセンター・向井秀幸准教授と共同研究しているが、ストレスによる興奮性亢進がPKNノックアウトマウスにおいて消失していることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メタ可塑性については、先行研究である、PKNの異シナプス性長期抑圧に関する研究のデータ取得を今現在も行っている上に、本研究課題に必要なPKNマウスの交配が予定通り行われないために、若干遅れ気味である。ただ、PKNがストレス負荷による、海馬歯状回顆粒細胞の興奮性上昇に関与しているという、予想外の結果が得られたのは、良い点であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
はじめに、PKNによるgroup1 mGluR依存性シナプス伝達長期抑圧の抑制について、PKNの作用点を明らかにする。マウス海馬スライスからシナプス応答を電気生理学的に記録しながら、group1 mGluRアゴニストを投与すると通常シナプス伝達長期抑圧が観察される。研究代表者はPKN KOマウス海馬では野生型に比べてかなり大きな長期抑圧が観察されることを見いだし、PKNはmGluR依存性長期抑圧を抑制していることが示唆されている。PKNがmGluRを直接制御している可能性を電気生理学的に検証する。(1)野生型およびPKN KOマウス海馬スライスCA1錐体細胞にパッチクランプ法で膜電位を記録し、DHPG投与による膜電位変化が野生型とPKN KO海馬で差はないか検討する。(2)CA1錐体細胞にパッチ電極から蛍光カルシウム指示薬を導入し、voltage-clamp下でDHPGを投与したときの細胞内カルシウム上昇がPKN KOマウスの方が野生型より大きいか観察する。これらの実験でPKN KOマウスの方がDHPGによる脱分極およびmGluR EPSCが大きく、カルシウム上昇が大きければ、PKNがエンドサイトーシスなどmGluR下流のシグナルではなく、mGluR機能を直接制御していることを示唆すると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
「11.現在までの達成度」の項で述べた通り、本研究課題の先行研究であるPKNの異シナプス性長期抑圧に関する研究のデータ取得を今現在も行っている上に、マウスが十部獲られなかったために、メタ可塑性に対するPKNの作用に関する実験の消化が遅れて、平成23年度予算に残金が生じた。 よって平成24年度には、(今後の推進方策) で述べた実験データ取得を最優先課題とし、PKN1a KOおよび、PKN1 KIマウスコロニーの維持費用、イオン型および代謝型グルタミン酸受容体阻害剤等、薬剤の購入に予算を充当する予定である。また、論文発表するための英文校正費および論文掲載費を計上している。
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