研究課題
母子関係に代表される個体間の関係(Personal Relationship)の形成が動物の社会性発達に本質的な役割を果たすことはよく知られている.このような個体間関係をもつ特定の個体に対する親近性(Personal Familiarity,以下,個人的親近性)は,顔の認知情報処理に非常に重要であることが示されているが,その神経基盤は不明な点が多い.本研究では,辺縁皮質に属する3つの領域,すなわち,脳梁膨大後部皮質,後部帯状回皮質および傍嗅皮質のニューロン集団による,(1)顔の個人的親近性と(2)顔のアイデンティティの表現様式の相違を明確にすることを目的として,複数のサルを用い,固視課題遂行中のサルの各脳領域から慢性的ニューロン活動記録を行った.視覚刺激として以下①~⑤の視覚刺激セットを使用した.①個人的親近性のある「顔」写真: 飼育室で飼育する他のサル,またはサルの飼育に携わっている人物の「顔」写真.②個人的親近性はないが視覚的既知性のある「顔」写真: サルが実際に見たことのない他のサルまたは人物の「顔」写真.③視覚的に未知な「顔」写真: ②と同様に,サルが実際に見たことのない他のサルまたは人物の「顔」写真だが,訓練には使用されず,ニューロン活動記録時にだけニューロン毎に異なるものを使用する.④種々の物体の写真: サルにとって既知または未知の種々の物体の様々な向きの写真(例:注射器など).⑤種々の風景や建造物の写真: サルにとって既知または未知の風景や建造物の様々な向きの写真(例:サルが実験室へ移動する際に通過する通路など).本年度は主に傍嗅皮質からのニューロン活動記録を行った.その結果,個人的親近性のある特定の個体の顔に対して選択的なニューロンが記録された.
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