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2012 年度 実施状況報告書

分泌型シナプス形成因子と受容体の複合体によるシナプス分化及び神経回路構築機構

研究課題

研究課題/領域番号 23500469
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

松田 恵子  慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40383765)

キーワード神経科学 / 脳・神経
研究概要

我々は、シナプス間隙を跨いで形成されるneurexin-Cbln-GluDタンパク質複合体が、両方向性に機能的なシナプスを作り上げることを、小脳平行線維シナプスにおいて明らかにした。このneurexin-Cbln-GluDタンパク質複合体が、小脳以外のグローバルな領域で機能することを、海馬シナプスをモデルにして明らかにすることが本研究課題の目的である。
これまでの研究から、小脳以外の神経細胞、特に海馬CA1細胞TAシナプスと海馬歯状回シナプスにおいて、Cbln1-GluD1タンパク質が強く共局在することを明らかにした。受容体であるGluD1は、海馬CA1細胞では最も遠位部のTA層に、歯状回顆粒細胞においては、分子層中部に集中して局在化していた。このようにGluD1は樹状突起に一様に存在するのではなく特異的な領域に区画化されていることが明らかとなった。
GluD1受容体に対するリガンドであるCbln1、Cbln4、あるいは両遺伝子のノックアウトマウスの解析から GluD1が樹状突起上において区画化して局在するには、Cbln1、およびCbln4が必須であることを見出した。
また新たに、Cbln1とは結合せずCbln4に対してのみ特異的に結合する受容体としてDCCを見出した。Cbln4によってシナプス後部受容体GluD1とシナプス前部のDCC受容体が繋ぎ止められていることも見出した。
本研究では、小脳で見いだされてきたneurexin-Cbln1-GluD2タンパク質複合体と同様に、海馬においてはneurexin-Cbln1/4-GluD1複合体が機能し、脳全体で普遍的な分子基盤であることを解明した。一方、Cbln4は小脳シナプスには存在していないので、小脳には存在していなかった新たなDCC-Cbln4-GluD1という分子基盤が海馬シナプスに存在することを明らかとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題の目的は、小脳で見いだされたneurexin-Cbln-GluDタンパク質複合体が、両方向性に機能的なシナプスを作り上げるという分子基盤が、小脳のみならず海馬シナプスにおいても機能することを明らかにすることである。これを以下の3つの項目に分け、研究を遂行してきた。それぞれの達成結果については以下のとおりである。
1)小脳以外の神経細胞でのCbln1-GluD1タンパク質複合体の局在解明について。上記に述べた通り、特異的抗体により明らかとした。
2)海馬歯状回神経細胞におけるCbln1-GluD1のシナプス形成、神経回路網構築への関与、について。Cbln1ノックアウトマウス、Cbln4ノックアウトマウスの解析により、GluD1の樹状突起内での局在区画化に、シナプス前部から放出されるCbln類が重要な機能を果たしていることを明らかとした。後述するようにシナプス後部に局在化するGluD1は、とくにTAシナプスにおいて可塑性の構築に重要な働きをすることから、シナプス前部因子Cblnによってシナプス後部の機能を成熟させ、またGluD1によって誘導される可塑性を有するという特異的なシナプスを、樹状突起内に区画化しうることが示唆された。
3)可塑性成立への関与を解明、について。院生らの実験によってGluD1ノックアウトマウスでは海馬CA1 TAシナプスのLTDが障害されていることが明らかとなった。
以上のように当初の計画に沿ってほぼ目的は達成しており、また新たな知見を加えることもできた。

今後の研究の推進方策

これまで見出した、「GluD1が、それを有するシナプスにおける、シナプス可塑性誘導に必須であること、シナプス前部のCbln4, Cbln1が、GluD1のシナプス局在に必須であること」という実験結果を基にし、来年度は、シナプス間隙で形成されるこの複合体が、シナプス後部あるいは前部で、どのような分子基盤を構築するかに焦点を当てて研究を遂行する。特に新たに見出されたDCCの機能に注目して研究を行う。
また、GluD1によるシナプス可塑性誘導にシナプス前部のCbln類が必須であることを示すため、Cbln1 Cbln4ノックアウトマウス、あるいは両ダブルノックアウトマウスにおいて、シナプス可塑性が成立するかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

未使用額の発生は、予定より効率的に実験が進行し、実験補助、動物管理などの人件費に充てる予定であった予算の一部が減額したためである。本繰越金は、25年度の消耗品、特に、新たに見出された分子であるDCCに対する中和抗体作成、購入資金に充て、その分子機能解析実験を進める。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Presynaptically released Cbln1 induces dynamic axonal structural changes by interacting with GluD2 during cerebellar synapse formation2012

    • 著者名/発表者名
      Ito-Ishida A. Miyazaki T. Miura E. Matsuda K. Watanabe M. Yuzaki M. Okabe S.
    • 雑誌名

      Neuron

      巻: 8;76(3) ページ: 549-64

    • DOI

      DOI: 10.1016

    • 査読あり
  • [備考] 慶應義塾大学医学部 生理学(柚﨑研究室)

    • URL

      http://www.yuzaki-lab.org/

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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