本研究の目的は、人為的に収縮フィラメント・リモデリングを制御できる平滑筋スキンド標本を用いて、フィラメント・リモデリング による平滑筋収縮制御のメカニズムを明らかにすることである。平成26年度は、平成25年度研究までに得られたデータに基づいて、 本実験を続行した。 1)a. 生理的標本を用いたX 線回折実験:モルモット盲腸紐またはラット肛門尾骨筋の細胞膜を化学的に破壊したスキンド平滑筋標 本を用いて、生理的環境下で弛緩時、収縮時のX 線回折像を撮影し、赤道反射強度と力学応答の関係を経時的に記録した。又、ATP 濃度、温度等の環境を変化させて、それらが両者にどのような影響を与えるか検討を行った。ATP再生系の阻害、またはミオシン阻害薬によりミオシンのみならず、細い平滑筋収縮フィラメント配列についても攪乱が起こることを実証した。一方、 MgADPのみの存在する条件でフィラメントの攪乱は観察されなかった。以上の結果の一部は、第57回日本平滑筋学会総会(坂本他)にて発表を行った。2)a. 生理的標本を用いた生理学、生化学的実験:X 線回折実験と同様の条件で、生理学・生化学実験析を行い、それぞれの比較検 討を行った。特に、今年度はミオシンへのADPの有無が平滑筋クロスブリッジ解離に与える影響を力学的・生化学的に測定し、ADPのみが存在する条件下では、クロスブリッジ解離の延長とラッチブリッジ形成の促進が観察された。この研究過程で、ラッチブリッジ形成過程にプロテインホスファターゼ2Aが寄与することが明らかになった。以上の結果の一部は第57回日本平滑筋学会総会(中野ら、及び 渡辺)、更に第93回日本生理学会大会(Watanabe)で発表した。
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