研究課題/領域番号 |
23500477
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
尾嶋 孝一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 畜産物研究領域, 主任研究員 (60415544)
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キーワード | カルパイン / 骨格筋 |
研究概要 |
骨格筋特異的に発現するタンパク質分解酵素であるカルパイン3の酵素活性不全が骨格筋細胞の変性・壊死の原因となる。しかし、骨格筋細胞内で活性化したカルパイン3をライブで検出するシステムがないために、骨格筋細胞内部でのカルパイン3活性化機構の詳細は明らかになっていない。本研究では活性化したカルパイン3をリアルタイムで検出する系を構築することを目的としている。本年度は昨年度に引き続き、FRETシステムを利用した活性化カルパイン3の検出システムの至適化を行った。具体的には、筋細胞内でカルパイン3が局在する部位に移行するためのシグナル配列を発現コンストラクトに付加することで、活性化したカルパイン3を感知するプローブをカルパイン3の局在部位で発現させることを行った。このような工夫をすることで細胞内で限局的に起きるカルパイン3の活性化の検出を画策した。その結果、骨格筋細胞内に発現させたカルパイン3検出用融合タンパク質はサルコメア内でZ線、M線および核に局在させることに成功した。 さらに一連の研究過程においてカルパイン3がリン酸化修飾を受けていることを見いだし、修飾されるアミノ酸残基を特定した。リン酸化を受けるアミノ酸残基を置換したリン酸化を受けない変異体を作製し、カルパイン3の酵素活性に与える影響を精査した。しかし、リン酸化の有無がカルパイン3の酵素活性には影響しないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カルパイン3がリン酸化を受けることを見いだした。タンパク質のリン酸化はそのタンパク質の機能変化に重要な役割を果たす。そのため、カルパイン3の酵素活性がリン酸化の有無により制御される新たな可能性を検証する必要性が生じた。カルパイン3のリン酸化と酵素活性制御機構の関連を精査することを優先させたので、培養骨格筋細胞内における活性化カルパイン3の検出システムに時間を割くことがあまりできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
カルパイン3酵素活性検出用のFRETプローブはいくつか作製できたので、これらを培養骨格筋細胞に発現させ、カルパイン3の活性化が骨格筋細胞内のどこで引き起こされるのかを検出する。また、培養骨格筋細胞にカフェインなどの薬剤、あるいは電気刺激を与えることで自律的に収縮・弛緩させた状態で活性化カルパイン3の検出を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究過程においてカルパイン3がリン酸化を受けることを見いだし、リン酸化とカルパイン3の酵素活性の関連を追究を優先した。また、オルガネラ移行シグナルを付加した検出用のプローブを作製するときに、プローブの検出感度を上げるために最適化を図る必要がある。その試行錯誤に予想以上に時間がかかったため、培養骨格筋細胞内における活性化カルパイン3の検出システムに時間を割くことがあまりできなかった。 骨格筋培養細胞を維持するための培養液・血清および培養ディッシュ、ピペットなどのプラスティック製品の購入費用に充てる。
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