研究課題/領域番号 |
23500478
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
仲村 厚志 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (50361829)
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研究分担者 |
中村 整 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50217858)
仲村 朋子 (吉川 朋子) 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (30451397)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | AMPK / 概日時計 / 視交叉上核 / 感覚 |
研究概要 |
AMP-activated protein kinase (AMPK) が、概日時計のリズム形成に深く関与する可能性について検討を行った。本研究開始までに、すでに、AMPKの阻害剤の投与により、マウス視床下部の視交叉上核(SCN)における時計遺伝子の発現リズムに影響がみられることを明らかにしていた。今年度は、活性化剤投与の効果について、更なる解析を行った。その結果、時計遺伝子発現リズムの周期は延長し、位相は前進し、振幅については一時的な増大の後、減衰がみられることを明らかにした。先行研究より、末梢時計におけるAMPKの役割として、体内の栄養状態を感知し、その情報を概日時計に伝えることが示唆されている。さらにその際に、時計タンパク質であるPeriodあるいはCryをリン酸化することが示されている。中枢時計であるSCNの概日時計は、栄養状態の影響を受けないことから、AMPKがSCNの概日時計機能に関与しない可能性も考えられた。しかし、本年度の結果は、AMPKがSCNにおいても概日リズムの形成に関与しさらに入力機構にも関わっている可能性を示唆するものであり、概日時計機構に普遍的に関わる重要な分子であることが示唆された。さらに、そのメカニズムとして、SCNにおいてもAMPKは時計タンパク質をリン酸化していることが考えられた。さらに本研究では、AMPKが感覚器官の末梢時計において、独自の重要な働きをしている可能性を想定し、マウス嗅上皮、および味蕾の培養系でのリズム測定を試みた。その結果、それぞれの器官において、時計遺伝子の発現リズムを観察することができ、またSCNとは異なり独自の位相を持っていることが示された。培養によるリズム測定が可能になったことにより、AMPKの感覚器官における役割解明へ向けて、解析を行う準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、マウスSCNにおける、AMPK情報伝達経路の上流および下流分子の解析を中心に進める予定であったが、AMPK自身の解析結果について想定外であった面も見られたため、その再現性の確認等に時間をとられた。しかし、重要な知見も得られ、また、それらが今後の解析の方向性を決めるうえで重要なものであったため、研究の達成度の遅れは、決してマイナス面だけであるとは考えていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初、AMPKのSCNにおける役割として、SCN細胞間の連絡を考えていた。そのため、AMPK情報伝達の下流分子として、細胞間接着分子を主に想定していた。しかし、本年度の解析結果や新たな知見などから、下流分子としては、時計蛋白質、細胞内カルシウム、あるいはCREBなども予想されるため、これらの可能性について生化学的、あるいは組織学的解析を進めていく。さらに、AMPKの感覚器官における役割の解析については、当初、平成26年度からの解析開始の予定であったが、可能であれば前倒しをして行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、生化学的、および組織学的解析を中心に進めていくため、抗体など高額な試薬をはじめとして、物品費の使用を中心に計画している。
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