研究の目的は、感覚フィードバックが、運動遂行中にどのように処理され身体意識と関わるのか、また、そして自他の身体の認識とミラーニューロンとの関係を明らかにすることである。2013年度は、視覚フィードバック処理とサルにモニタースクリーンをみながらターンテーブルに取り付けられた3つの物体をつかむ課題(手操作運動課題)とモニターに映される手の運動の動画を観察する課題中の下頭頂葉のニューロンの活動を記録し、3半球からの記録が終了した。このとき、映像がリアルタイムで提示される場合と、遅れが生じる場合を設定した。記録部位は、ミラーニューロンが報告されているPFGと手操作ニューロンが記録されるAIPである。動画に対して反応する手操作運動関連ニューロンのうちAIPやPFGでは、自己の手の運動の視覚フィードバックに反応した。また、他者の動作に視覚的に反応するミラーニューロンとしての性質も持っているニューロンが多く見つかった。ミラーニューロンが運動実行中の運動のモニターをしていることを証明している。記録後、サルの脳の標本を作製。記録領域がPFGとAIPであったことを確認した。ミラーニューロンのAIPでの記録は今回が初めてである。さらに、動画中の手の映像だけにして、物体の映像を消しても反応することが明らかになり、動作のゴールではなく運動のキネマティクスを表現している。この結果は、現在論文にまとめ海外誌に投稿予定となっている。一方で、視覚フィードバックに遅延を加える実験は、遅延に伴って反応潜時がおそくなるタイプが多く、今のところはっきりとした結論が言えない状況である。これについては、さらにデータを積み重ねる必要がある。また、本年度は、運動前野F5で、同様の実験を行ったが、ミラーニューロンがあまり記録されていなかった。標本を確認したところ、記録領域がややずれており、今後も実験を積み重ねる必要がある。
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