研究課題/領域番号 |
23500489
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海部 知則 東京大学, 医科学研究所, 助教 (90343037)
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研究分担者 |
岩倉 洋一郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10089120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | C型レクチン受容体 / サイトカイン / 骨代謝 |
研究概要 |
C型レクチン受容体の一つであるDCIR遺伝子欠損マウスが加齢に伴い自然発症する腱付着部炎の発症機序と病態形成の進行過程を明らかにし、ヒトにおける脊椎関節症の病態解明および新規治療法の開発に有用な動物モデルを樹立することを目的としている。当該年度はDCIR欠損マウスのB6背景への戻し交配を進めつつ、病理学的解析を実施することと次年度に向けて各種サイトカインとの二重欠損マウスの作成に取り組んだ。DCIR欠損マウスの戻し交配は計画通りに推移し平成23年度においてB6背景への戻し交配が完了した。戻し交配と並行しながら関節部局所の病理組織解析を実施し、各種染色方法により異常な細胞増殖を関節局所に認めた。またqPCR法により関節局所におけるサイトカイン産生を検討したところDCIR欠損マウスにおいて発現亢進するサイトカインを見出した。一方でDCIR欠損マウスからリンパ球系細胞を欠失させると関節部位の強直発症が完全に抑制されることから強直発症と免疫細胞との関係を検討した。その結果サイトカイン陽性T細胞の割合が加齢に伴いDCIR欠損マウスにおいて有意に増加してくることを見出し、DCIR欠損マウスにおいてT細胞制御が破綻している可能性が示された。DCIRの機能制御を理解するためにDCIR発現細胞をPCR法とフローサイトメトリー解析にて詳細に検討したところミエロイド系細胞に発現していることを確認した。このことからDCIRを介した制御機構の破綻により免疫システムの制御異常が、骨格系細胞に作用を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していたDCIR欠損マウスのB6背景への戻し交配、DCIR欠損マウスの関節局所の病理組織解析、各種サイトカインの発現動態解析を実施し計画予定に即した進捗を達成している。また次年度に向けた解析のために本年度の解析から得られた結果を基に二重欠損マウスの作製に既に取り組んでおり平成24年度の解析に向けた準備も進行している。一方で移入実験により病態形成に関与する免疫細胞の同定は細胞移入により関節部位の強直発症が観察出来ず計画予定を達成出来なかったが、現在作製している二重欠損マウスの解析から責任細胞の同定が可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の結果を基に病態形成を引き起こす免疫細胞の機能異常を明らかにすることを目的とする。現在作製しているDCIRと各種サイトカインとの二重欠損マウスを利用して病態形成に関与する細胞群の同定、強直の発症とサイトカインとの関係を検討する。首尾よく強直の発症が抑制したマウスを見出した場合、該当サイトカインと骨代謝機構との関係を解析する。また免疫細胞と強直発症との関係を明らかにするためにT細胞とB細胞の機能解析をDCIR欠損マウスと野生型マウスを比較して解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬・消耗品を中心として研究費を使用するが、24年度で解析するためにDCIR欠損マウスとの二重欠損マウスを作製したのでマウス飼育費として必要に応じて研究費を使用する。また本年度の成果を報告するために学会参加を予定しており学会参加のための旅費として研究費を使用する。
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