研究課題/領域番号 |
23500489
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
海部 知則 東京理科大学, 生命医科学研究所, 助教 (90343037)
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研究分担者 |
岩倉 洋一郎 東京理科大学, 付置研究所, 教授 (10089120)
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キーワード | 骨代謝 / C型レクチン受容体 |
研究概要 |
C型レクチン受容体の一つであるDCIR遺伝子欠損マウスが加齢に伴い自然発症する腱付着部炎の発症機序と病態形成の進行過程を明らかにし、ヒトにおける脊椎関節症の病態解明および新規治療法の開発に有用な動物モデルを樹立することを目的としている。当該年度 はB6背景への戻し交配が終了したDCIR欠損マウスを用いて解析を進めつつ、前年度に樹立を行った各種炎症性サイトカインとの二重欠損マウスを用いて腱付着部炎および強直の発症と炎症性サイトカインとの関連を詳細に検討した。前年度において関節部位にサイトカイン陽性T細胞が加齢に従い集積することを検出していたがこのサイトカイン欠損をDCIR欠損マウスに導入したところ強直発症を完全に抑制することを見出した。従来、発症との関連が指摘されていた炎症性サイトカイン欠損においても強直発症を抑制することから複数の炎症性サイトカインが病態発症・増悪化に関与していることが示された。また今回新たに病態との関係を明らかにした炎症性サイトカインが骨系細胞に作用することを見出しつつある。その結果、この病原性炎症性サイトカインは免疫系細胞に作用し炎症を惹起するとともに骨代謝にも影響をおよぼすことが考えられた。このことからDCIRを介した制御機構の破綻により免疫システムの制御異常が引き起こされ、その結果骨格系細胞に作用を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していたDCIR欠損マウスと各種炎症性サイトカインとの二重欠損マウスの作出に成功し、骨代謝異常と病原性炎症性サイトカインとの関連を明らかにし計画予定に即した進捗を達成している。前年度に細胞移入実験により病態形成に関与する免疫細胞の同定を試みたがこの実験は成功しなかった。今年度、責任細胞を同定することも目指して炎症性サイトカインとの二重欠損マウスの解析を行い病原性炎症性サイトカインと責任細胞の同定に繋がった。これらの結果から最終年度において免疫系と骨代謝系との相互作用とその制御破綻から生じる病態メカニズムを解析する土台が構築され、順調に実験計画を実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの結果を基に、病態形成を引き起こす免疫細胞の機能異常を引き起こすメカニズムの解明に挑む。また病原性炎症性サイトカインと骨代謝制御の関係を明らかにすることを目的とする。in vitroの解析を中心に行い、T細胞制御に関わる樹状細胞の抗原提示能やT細胞活性能を野生型と欠損型マウスで比較する。また病原性炎症性サイトカインの骨系細胞に対する作用をin vitroの培養系を用いて実施する予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬・消耗品を中心として研究費を使用する。今年度は研究計画の最終年度のため成果を公表するために論文作成費を計上する。またこれまでの研究成果を報告するために学会参加を予定しており学会参加のための旅費として研究費を使用する。
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