研究課題
近年ZFNまたはTALENを用いた高効率な相同組み換え法が開発されている。ZFN、TALENとはゲノム上の任意の場所の両側9塩基に特異的に結合できるよう人工的に合成されたDNA結合領域 とFokI 制限酵素のエンドヌクレアーゼ領域を結合させたキメラヌクレアーゼであり、FokIが二量体を形成しゲノム上の特定の場所を切断することで細胞のDNA修復機構が働き、さらには相同組換えを誘導することができる。これらを用いることで相同組み換えの効率は1~50%と飛躍的に良くなることが報告されている。一方で問題点は、ZFN 2種類とターゲッティングコンストラクトの3種類の遺伝子を同時に発現させることが必要であり、初代培養細胞などの遺伝子導入が難しい細胞では当然ZFNの効果は得られにくいということである。改善策として考えられる方法は、「細胞への導入効率を上げる。」「ZFNとターゲッティングコンストラクトをシングルベクターで導入する。」「相同組み換え効率を上げる。」という三点である。 この三点を達成すべく本研究では本研究ではHIVインテグラーゼとZFNの融合タンパク質およびブルーム抑制カセットをターゲッティングコンストラクトが組み込まれたレンチウイルスベクターに封入し初代培養細胞および受精卵での相同組換えを試みる。当該年度にはまず、ZFNとインテグラーゼの融合タンパク質をターゲティングコンストラクトと共に細胞に導入するとターゲティングコンストラクトのみの場合の5倍以上相同組み換えを促進することが確認できた。 またZFNを既報にあるOPEN法で作成し、その活性を確認した。 さらにTALENにおいても同様に活性が確認できた。 ZFNとインテグラーゼの融合タンパク質の活性が確認されたことは本研究達成の為の大きな前進であると考える。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の研究目標は1、ZFNコンストラクトおよびレンチウイルスベクターの作製、2、293T細胞における変異GFPの修復実験、3、Foxn1をターゲットとするZFNの探索であった。1に関してはFoxn1ゲノム配列の複雑性からいまだ達成されていないが、リコンビネーションを利用したBACからのクローニングで改善されている。 2、3は完全に目標が達成されている為おおむね順調であると評価した。
今後はFoxn1をターゲットとするZFNの初代培養細胞での効果の確認およびヌード変異の遺伝子治療を行う。申請者はすでにヌードマウスよりmouse embryonic fibroblast (ヌードMEF)およびinduced puluripotent cell (ヌードiPS)を作製している。さらに正常Foxn1を過剰発現させたヌードiPSをヌードマウス胚盤胞に注入すると正常な胸腺が発生することも確認している。このヌードMEFに作成したZFNおよびTALENとターゲッティングコンストラクトとして野生型Foxn1を持つAll-in-Oneレンチウイルスベクターを感染させ、Foxn1領域のシークエンスおよびサザンブロットを行う。その結果から最も高効率で相同組み換えが起きかつランダムインテグレーションが無い組み合わせを選択する。Foxn1が正常化したヌードMEFよりiPSを誘導し、ヌードマウス由来胚盤胞に注入することでヌードマウスに胸腺が再生されるか確認する。さらにZFNがFoxn1以外に影響を与えていないかマウスの表現型を観察する。
次年度はiPS培養、胚操作などに係る細胞培養試薬に350,000円、細胞培養器具に350,000円、サザンブロット、ゲノム解析に係る遺伝子工学試薬に300,000円、マウス購入経費に150,000円、学会報告の為の旅費に150,000円、論文校閲等の謝金に100,000円、論文投稿料に100,000円を計上する。
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e22008