研究課題/領域番号 |
23500494
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 民生 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293620)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マウス / ストレプトゾトシン / 糖尿病感受性遺伝子 / 体系的遺伝解析系 / コンソミック系統 / コンジェニック系統 |
研究概要 |
マウスSM/J系統とA/J系統を起源として作出されたリコンビナント近交系とコンソミック系統群は、複雑な多因子遺伝形質の原因遺伝子解析に極めて有効な体系的遺伝解析系である。ストレプトゾトシン(STZ)は膵臓のランゲルハンス氏島(膵島)の破壊作用を有し、糖尿病誘発剤として汎用されている。最近、申請者はA/J系統はSTZ誘発糖尿病感受性でSM/J系統はSTZ抵抗性である事を見出した。本研究では上記体系的遺伝解析系を駆使して膵島脆弱性を規定すると推定されるSTZ誘発糖尿病感受性遺伝子の同定を行う事を目的とした。 予備的な解析により、A/J系統の第11番染色体(Chr.11)をSM/J系統に置換したコンソミック系統(A-11sm)がSTZ抵抗性を示すことが判明していたため、A-11smのSTZ感受性について詳細な解析を実施した。その結果、A-11smはSM/J系統と同レベルのSTZ抵抗性を示し、Chr.11上にSTZ感受性を規定する主要な遺伝子が存在する事が示された。次に、その遺伝子のChr.11上の位置を特定するために、SM/J系統由来のChr.11を7種の領域に分断化してA/J系統に導入したコンジェニック系統群を作製し、各系統のSTZ感受性を調査した。現時点では全ての系統の解析が終了していないが、Chr.11の中央部付近(28~68Mb)に目的とする遺伝子が存在することが判明した。 この領域にはNOD系統やNSY系統などの他のマウス糖尿病モデル系統においても糖尿病感受性遺伝子が存在することが示されているが、まだ原因遺伝子は同定されていない。本研究によりこの領域内の催糖尿病遺伝子が同定できれば、糖尿病発症における膵島脆弱性の役割を考察する上で、極めて意味があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の最大の課題はSTZ誘発糖尿病感受性遺伝子が存在する染色体領域を解析することであった。上述のように、Chr.11にSTZ感受性に主要な役割を果たす遺伝子が存在し、しかも、その遺伝子の存在領域をChr.11の中央部付近に特定する事に成功している。したがって、概ね当初の予定通り研究が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) SM/J系統由来のChr.11を分断化してA/J系統に導入したコンジェニック系統群のSTZ感受性解析を進め、感受性を規定する主要な遺伝子の存在領域を10~20Mb程度の領域内に限局する。(2) マウス・ゲノム・データベースを用いて(1)で特定した領域内の遺伝子より膵島脆弱性に関与する可能性が高い候補遺伝子を選び出す。(3) (2)で選抜した候補遺伝子について塩基配列や発現レベルの解析を行い、SM/JとA/J系統間で変異がある遺伝子を見つけ出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品は必要ないため、大半は候補遺伝子の塩基配列の解析や遺伝子発現解析の為の試薬類やマウスのSTZ感受性の解析に必要な試薬等の消耗品の購入と、マウスの飼育に関する経費として使用する。昨年度からの繰越金額(1,869円)については、これらの消耗品の購入に充てる。
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