研究課題/領域番号 |
23500495
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
山崎 樹里 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任助手 (40464193)
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研究分担者 |
鳥居 隆三 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 教授 (50106647)
土屋 英明 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 技術専門職員 (10378440)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 発生工学 / 体外成熟培養 |
研究概要 |
当該年度は、卵巣刺激を施した成熟メスカニクイザルから採取された未成熟卵子(germinal vesicle:GV、Metaphase I:MI)を用いて、体外成熟培養法の確立、および体外成熟卵子の評価としての顕微授精を行った。体外成熟培養法の確立を目指し、TCM-199に10%-FBS、penicillin-streptomycnを添加したものを基本培地とし、BDNF、GDNF、IGF-I、EGF、FGF、Leptin、Estradiiolの7因子添加の影響を調べた。また、ヒト可溶化羊膜(Human Solubilized Amnion Products:HSAP)を培養器剤にコートして使用することで、ラミニン、ニドゲン、コラーゲンなどの影響を調べた。その結果、GV、MIどちらのステージにおいても、7因子の添加、およびHSAPの使用による体外成熟率の改善は見られなかった。また、体外成熟卵子の顕微授精の結果、高い受精率が得られた。しかし、体外培養により発生の確認を行った結果、全ての顕微授精胚が8細胞期~16細胞期で発生を停止した。そこで、体外成熟卵子の核成熟を確認するために、体外成熟卵子を固定、染色して核相を調べた結果、多くの卵子で核成熟が確認された。次に、体外成熟卵子の細胞質成熟を確認するために、ヒト卵子において、細胞質が成熟すると細胞質表面に整列する表層顆粒の分布を調べるために電子顕微鏡観察を行った。その結果、採卵時に成熟している卵子においても、表層顆粒が細胞質表面に整列しておらず、ヒトと同様の評価ができないことが確認された。また、体外成熟卵子の観察により、表層顆粒が細胞質表面に整列しているものが多数含まれていた。体外成熟卵子が顕微授精後に発生停止になることから、カニクイザルにおいて、表層顆粒が細胞質表面に整列していることは、細胞質成熟が過剰なのではないかと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カニクイザル採卵方法の改善により、未成熟卵子(GV、MI)そのものを得ることが困難になったため、各実験群の卵子数が非常に少なく、結果が出るのに時間がかかるため。また当該年度内に、ヒトの体外成熟培養において効果が報告されている条件において、カニクイザル未成熟卵子の体外成熟培養法確立を目指していたが、ヒトと同様の効果が得られておらず、体外成熟培養法の確立に至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の結果より、ヒトの体外成熟培養法では成熟率、顕微授精後の発生率が改善されなかったので、培養液をTCM199からglucouse free mediumであるP1 mediumに変更し、成熟率の改善を試みる。また、成熟してから顕微授精を実施するまでに時間がかかりすぎ、卵子が老化したために顕微授精後の発生率が悪い可能性が考えられたため、観察の間隔を狭めて成熟卵のクオリティ低下前に顕微授精を試みる。更に、核成熟と細胞質成熟の時期があっていない可能性が考えられたため、GVBD阻害剤等の使用により、成熟時期を一致させることが可能か否か検討する。体外成熟卵子の顕微授精後の発生停止が改善された際には、腹腔鏡を用いた卵巣観察により、レシピエント個体の排卵日を特定し、胚の発生段階と一致している個体に胚移植し、体外成熟卵子由来産子の獲得を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に使用する大型機器は既にセンター内にあるものを使用する。また、卵巣刺激のためのホルモン剤はヒトの不妊治療で使用されているものと同じものを用いる。更に、これらホルモン剤は9日間連日投与を行う必要があるが、サルへの投与によるストレスを考慮し、埋め込み型ポンプを使用する。卵子の体外培養には培養液に加えて、成長因子などの高価な試薬や、プラスチック器具を必要とするため、研究経費の85%を消耗品として計上する。その他を、実際に実験に使用する動物の飼料費や、研究成果の学会報告のための国内旅費を計上する。
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