研究課題
腸管出血性大腸菌 (EHEC) O157をマウスに経口感染させ、同時にマイトマイシンC (MMC)を腹腔内投与することによって、急性脳症を発症するマウスモデルの脳や脊髄を免疫染色法で調べた。その結果、脊髄前角運動神経と延髄網様体神経細胞にアポトーシスを認めた。これらの部分では、アストロサイトが活性化しており、それに伴いaqaporin 4(AQP4)が、脳血管周囲から消失していた。なおミクログリアは活性化は認めなかった。これらの結果から、ベロ毒素によるアストロサイトの直接的な活性化に伴い、血管内皮細胞の機能維持しているAQP4が障害を受け、血液脳関門が破壊されたと考えられた。最終年度ではEHECを経口感染させ、同時にMMCを腹腔内投与するモデルに、ヒト型Muse 細胞またはnon-Muse細胞を、EHEC感染6時間後に尾静脈から静注した。マウスはNOD-SCIDマウスを用いた。その結果、Muse細胞は延髄や中脳に生着しており、non-Muse細胞は生着しなかった。脳全体においてアポトーシスを生じた細胞を数えた結果、Muse細網を移植したマウス脳ではnon-Muse細胞を移植したマウスに比べ、アポトーシスの数は有意に減少していた。さらにMuse細網を移植したマウスはnon-Muse細胞を移植したマウスに比べ、アストロサイトの活性は抑制されており、それに伴い、AQP4も脳血管周囲に明確に認められた。non-Muse細胞を移植したマウスでは、アストロサイトが活性化しており、脳血管周囲にAQP4を認めなかった。これらの結果から、Muse細胞は、脳内においてアポトーシスを抑制し、アストロサイトの活性を抑制する免疫抑制効果を示した。その結果、血液脳関門は正常に保たれた。再生医療に用いられるMuse細胞が、EHECによる脳症に効果を認めたことは大きな成果であり、今後、臨床研究を行いたい。
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